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長くなりそうなんで一日一回更新出来たらいなあ。
R18な葉受けです。
それでもよかったらどうぞー
――――
(あーあ、まずったな)
圧倒的な暗闇に塗りつぶされた視界の中、ゆっくりと意識を取り戻した葉の脳裏にまず初めに浮かんだのはのは、そんな気の抜けたぼやきである。
すなわち、
(帰ったら少佐と真木さんに散々どやされるんだろうなぁ)
という凡そ有り難くない予知にがっくりと肩を落とした。
そして次にその濁った思考に浮かび上がったのは、身体中を鈍く支配する痛みだった。
(ていうかここ、どこだよ)
Kids Nap―キズナ―2
きしきしと痛む背を床に転がされているようだった。
多少途切れてはいるものの、葉の記憶に不備がないならば、何者かに拉致されたことは間違いなかった。
(澪を逃がせただけ良しとするか)
暗闇の中そんなふうに自分を慰めてみても、さらに苛立ちが加速するだけだった。これは明かな自分の失態である。葉はまた一つ胸の内で溜息をついた。
まだ葉の眼は闇に慣れていなかったが、淀んだ空気の振動が、近くに複数の人間がいることを示していた。下手に動いて相手の警戒を強めるより、気を失ったままの振りをして様子を窺ったほうがいい。
そんなふうに言い聞かせて息を潜める。
埃と水気が混じった嫌な匂い。だいじょうぶ、五感はちゃんと働いている。
足は動く。縛られてはいるものの手も動く。ただし、念動力は動かなかった。
後に回された腕を拘束している物体を指先でなぞってみる。
ひやりとした感触。鋭利な断面。堅い金属。能力を制御するESP錠に間違いなかった。
なんとかこれを外せないだろうか。
指先を滑らすようにして金属の接合面を調べた。蝶番の突起に爪を立てた時だった。
――ビィィィィィン!
指先から身体中を切り裂く痛みが走り抜ける。青白い閃光が葉の意識を麻痺させた。
「ん、、ア、ァッ!」
手錠から電流が流れたのはたった2秒。しかしその数倍長い苦鳴が暗い部屋に響き渡った。
「やあ、ようやくお目覚めかな?」
葉の悲鳴が納まるのを待って、目の前にいるらしい男がこの場に不似合いな程陽気な声をかけた。徐々に闇に慣れた目が男の輪郭と周囲の状況を捕らえはじめる。
「……ッア、あぁ、おかげでよく眠れたよ」
「無理にロックを外そうとすると高電圧が流れる仕掛けさ。これに懲りたら大人しくしているといい」
男はカツカツと踵を慣らして葉に近づくと倒れ伏す葉の腹を蹴り上げた。しかしもう、悲鳴は聞こえなかった。ただ体を折って唇を引き結ぶ。
「君に聞きたいことがあってね」
男は葉の前にしゃがむと、その柔らかい髪を乱暴にひっぱりぐいと持ち上げた。
反射的に身を捩り、手首に嵌められたESP錠がガシャガシャと耳障りな音を立てた。
「我々の知りたいことを教えてくれたら、お家に帰してあげるよ坊や」
「……ッ!誰がッ!」
「――パンドラとは一体なんだ?」
「はぁ?」
あまりに漠然とした質問に、葉は一瞬毒気を抜かれ驚きに目を見開いた。不機嫌そうな口調で答える。
「……エスパーによるエスパーのための反社会的組織。知ってるだろ?一時期派手な宣伝してた時もあるし」
「ハハ、あれには度肝を抜かれたよ。いずれにせよ、我々ノーマルの危険な敵には違いない」
「そういうこともあるかもね。……何が言いたい」
地面に這い蹲ったままの屈辱的な体勢、丁寧さの裏に隠しきれない悪意が漏れ出す粘っこい言い回し。その全てが不愉快だったが、視線を外したら負けだった。男の容貌も目も、冷たくどこか爬虫類を思わせた。
「その反面バベルの連中とも連んだり、一体真の目的はなんだろうと思ってね」
「そんなん、俺の方が聞きたいっての」
ある意味で、葉の偽らざる本心だった。首領である以前に、大切な養い親でもある兵部の心は、いつもいつだって手の届かない高みにある。
「では、そちらのほうは直接君のボスから聞くとして、君の知っているパンドラの情報を渡してもらおうか――構成員とその能力、アジト、活動資金のルート、関連組織の有無――全てだ」
教えるはずがない、と言いかけて葉は気付く。
見下ろす男の暗く冷たい瞳は、葉がしゃべらないことを充分承知の上で言っているということを示していた。
「……ッの野郎っ」
(……舐めた真似しやがって)
怒りで耳までかっと火が昇ったのを自覚する。激情にまかせて力を発動しようとするが、ガシャン、と手錠が小さく鳴っただけだった。
キズナ
Kids Nap―誘拐―
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ぼちぼち続きます
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