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今日も一日、何事もなく平和にすごし(パンドラにおける平穏な一日というのは気紛れな首領の協力にかかっている)、真木がスーツの上着を脱ぎタイを緩めて立ち上がった時だった。
「だーれだ」
背後の人影に手で後頭部を引き寄せるように目隠しをされた。
いつからいたのだろうか。背中越しに響く楽しげな笑い声。とは反対に、真木は潰れたカエルのようにうめいた。
「ぐ、ぇ……はな、せ、葉…!」
「あったりー」
ふいに首まわりに感じる圧力が和らぐ。葉の忍び笑いが収まるのを待たずに真木はゲホゲホと盛大に咽せた。
「ねぇー真木さん。俺暇なんだ。遊んでくんない?」
葉はふわりとフローリングに着地すると、今度は、首を絞めるわけでも目隠しをするわけでもなく、真木の腰に腕を回した。
「少佐に頼め。俺はもう寝る」
「珍しい。アンタがそう言うとは思わなかった」
「チェスでもトランプでも相手してもらえばいい」
「ちぇー。そういう意味じゃないのになあ」
葉は背後から腕を回したまま、真木の肩にあごを預けてわざとらしく溜息をつく。猫のようなしぐさだった。背の低い葉はわずかにのびあがったまま、つまんなーいと真木の髪を引っ張った。
「ったく、ほんとに何をしに来たんだお前は」
以前は真木の弱点であるスタンガンを持ち出すこともあったからそれに比べれば可愛げもあったが、いきなり部屋に現れて首を絞められてはたまらない。
「だから暇なんだって……あ、いいもんあるじゃん」
葉は真木の肩越しに、部屋の隅のキャビネットに並んだウイスキーのボトルを差した。
「だめだ。未成年だろ」
形だけの抑止。
真木も本気ではなく、葉にならって溜息をつくとスコッチとロックグラスを二つ取った。
「サンキュ。さすが話がわかるね」
度数の高い酒をストレートでグラスに注ぎ、葉に押しつける。
「……何があったか知らないが、眠れない時はこれがいい」
「別に俺、寝れないわけじゃないんだけど」
受け取った葉は、不機嫌そうに視線をそらし、それでも本当に酒が飲みたかったようで素直にグラスを舐めた。寄りかかったキャビネットが揺れる。
「残念だ。せっかく付き合ってやろうと思ったのにな」
真木は彼にしては珍しく笑みさえ浮かべて、葉の隣に立つと自分より少し低いふわふわの頭をくしゃりと撫でた。
「……ふぅん。じゃ、遠慮なく」
「おい、葉……!」
葉は真木の手から琥珀色の瓶を奪うと直接口をつける。
呆気にとられる真木を尻目にごくりと白い喉が上下する。瓶を奪い返そうと伸ばした手を逆にぐいと引き寄せられ、
「……ぐっ、んっ」
いっぱいに含んだ熱い液体が真木の咥内にまで流れ込む。真木が無理矢理飲み干したあとも、アルコールに濡れた吐息を貪るようにぬるりとした舌が歯列を割って粘膜をつつく。喉が焼けてちりちりと熱が燻った。
「…ぷはっ……ん。はは、真木さんイイ飲みっぷり」
「葉、何するんだ……!!」
気付くとボトルは床に落ち、葉の腕は真木の首に回されていた。あっけにとられて目を白黒させる真木に再び葉の唇が近づく。飲み切れず口の端から伝ったスコッチを舐めとるように啄む。
液体と同じ琥珀色の潤んだ瞳に見上げられ真木はたじろいだ。
「……おまえさては最初から飲んでたな?」
「……ハハハちょっと紅葉サンに潰されかけて」
「ってなぜ目をそらす」
「うん、いやあ黒巻まで来ちゃってさあ。カメラ持ち出すんだよあの人怖くね?!」
半泣きで真木の胸ぐらを掴み力任せに揺さぶる。そしてそれもしばらくすると真木にもたれるように大人しくなった。ああまたか、と思わないこともなかったが、今は既にほろ酔いでぐったりと真木の胸に頭を預ける葉の体調の方が気になった。
「うぇー。気持ち悪ぃ」
「最初から酔ってるのに一気呑みするからだ」
「向かい酒ってやつ?」
「……バカだろ。」
「……だって、寝れなかったんだもん」
ぎゅーっと真木のシャツを掴んで頭を埋める。
「さっきと言っていることが違うぞ」
「うー……ん」
むにゃむにゃと目を半分閉じて言葉にならない喃語を呟く葉を抱き上げ、真木は仕方なしにベッドに運んだ。乱暴にベッドに体を放り投げると早くもすぅすぅと寝息のような穏やかな吐息が広がる(ただし相当酒臭い)。
さて、自分はどこで寝ようかと真木は部屋を見渡した。葉が投げ捨てた空き瓶が目に入る。拾おうと屈んだ時、寝返りを打つ葉の声が聞こえた。
「あー真木さんのベッド久しぶりー」
「早く寝ろ、酔っ払い」
真木は何度目かもわからない盛大な溜息をついた。
「真木さんこっちきて。一緒に寝よ?」
ちょいちょい、と腕が手招いて、シーツををぼっすんぼっすんと叩く。
真木は忘れ去られてた自分の飲みかけのグラスを、氷を足して手に取って戻るとシーツの縁に腰掛けた。丸い氷がグラスにぶつかり、からりと涼しげな音が響く。
「それひとくちちょーだい」
「だめだ」
「あっそ。じゃあこっちならいい?」
葉が長い髪を無理矢理引っ張ると真木は振り向いて顔をしかめた。
少し考えるようなそぶりをしてサイドテーブルにグラスを置くと、身を屈めて葉の上に覆い被さったのだった。
for heaven's SAKE
(どうか、お願い)
――――――
葉の機嫌が悪かったり寝れない夜はたいてい少佐のせいです\(^o^)/真木さんもまた然り。
少佐を間に挟んでの真木葉が大好きです。
二人にめちゃめちゃ愛されてる少佐の3Pもいいなー。
この三人が仲良くしてればなんでも幸せです
お気に召したらぽちっといただけたら嬉しいです