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今週も本誌パンドラすごかったですね!下に今週の感想二つ更新してあります(落ち着け自分)
燃料投下されすぎですよほんとオーバーキル気味^q^
この前のお題の消化続きです
猛獣の飼い方10の基本
1あるていどのきけんをかくごしましょう
2じぶんをしゅじんだとにんしきさせましょう
3せをむけてはいけません
4むりにいうことをきかせようとしてはいけません
→5あまやかしすぎはいけません
3時のおやつの内訳は、その日の気候とその時間に手の空いている者のセンスで決まる(家計に左右されるということはこのパンドラにおいてはもちろん、無い)。
例えば、涼しい海風が柔らかくマストを撫でる一昨日は女性陣が本家パリの洋菓子店で購入してきたマカロンだったし、昨日はやたら蒸し暑い熱帯地獄だったためかシンプルなかき氷だった(葉がどこからかレトロな削氷器を拾ってきたのも原因だったかもしれない)。
そして今日は。
「いいなー、みんなして何食べてるの?」
灼熱の太陽も真っ盛りな午後3時ごろ、兵部はひょっこりと皆が集まるラウンジに顔を出した。
思い思いにくつろいでいる5,6人ほどの面々は、主のいつもと変わらない帰還を内心で喜んだ。
兵部は空いてるソファの一つに腰を下ろす。桃太郎が熱そうに兵部の服の内側から這い出てきた。
「おかえりなさい、少佐」
「おかえりー!」
「ただいま、カズラ、カガリ」
「早咲きのブドウよ。少佐もいかが?」
「いいね。あ、真木。お茶入れて、冷たいの」
充分心得ている腹心の部下は無言で立ち上がると、すぐに冷たいジャスミン茶を煎れて戻ってきた。
「どうぞ、少佐」
「うわぁ、大きいね。巨峰かな?」
兵部は面白そうに目を細めると、たわわに実る房ごと顔の前に掲げる。
一つ一つだって大粒の果実が連なると、ずっしりと重たい。そしてよく冷えている。
「良かったらこれ食べる?私いらないから」
「あー紅葉はその爪じゃちょっと大変だろ」
葉が笑って示したのは紅葉の綺麗に揃えてラインストーンで飾った爪だった。
「美味しいんだけどね。指が紫になっちゃってもうイヤ」
紅葉は濡れた指先をナフキンで拭うとさっさと立ち去ってしまった。
「うーん。でも僕もいいや。皮むくのめんどい」
兵部は顔をしかめると、皿ごとテーブルに戻した。
桃太郎は皮ごとむしゃむしゃとかじりついていた。ヒマワリの種よりも数段大きいそれをお腹にのせてかじる姿はラッコのようだった。
『コレオイシイゾ、京介-?』
「不精するなよジジイ」
ちなみに葉もパクパクと、皮ごと丸呑みしている。
むしろ噛んでいるかどうかも怪しい。
「2匹ともあとで覚えてろよ」
「え、俺も動物扱い?!」
それには答えず、兵部は酸味の利いたぶどう酒のような渋い顔をして数秒考え込む。
出した答えは単純明快、
「真木、剥いて」
「え、ええ?!ああ、はい、わかりました少佐」
いきなり話題をふられて反応に遅れた真木が半分裏返った声で返事をした。
子供じゃないんだから、とは思っても言えない。
「うわ、少佐ずるい」
「なんとでもお言いよ。これが正しい人の使い方だ」
「では少佐、剥いたのから皿に置いときますので」
濃紫の皮をはいで現れたエメラルドの瑞々しい粒。
兵部は手を伸ばして、すぐにひっこめた。
「少佐?」
「これじゃやだ」
「は?」
「もっと、ツルン、ってむいてよ。つるんって」
兵部が指さしたのは、確かに、どこかへこみがあって、ピーラーでむいたでこぼこのジャガイモを思わせた。真木はハァと情けない溜息をつくと、それでも言われたとおりに新しく一粒をむきなおす。「不器用」と暗に言われたのが不本意のようだった。
「……これでよろしいですか?」
「ん、いいね」
今度こそ、丸く綺麗な球体にむかれたプルンと弾けた果実に兵部は満足げに頷くと、お皿からひょいと指でつまんで口にほうりこむ。
「冷たくて美味しいね」
「だろー?」
「真木、早く次」
「はいはい」
言いながらも、忠実な腹心は首尾良く次の一個を用意しおえていた。
冷たいブドウを兵部の前の皿にのせようとした時、
「な……?!」
「ん、おいしい」
真木が気付いたのは、ブドウが兵部の唇にするりと飲み込まれ、こくんと白い喉が上下した時だった。指先に触れた温かい感触に気付く。
「……何変な顔してるんだよ、はやくー」
「ええ、ああ、はい」
兵部が真木の指先から直接唇で拾う様子はまるで小鳥が啄むようだった。
「あの、」
次は、真木は少しだけ戸惑ったように指を引いて遠慮がちにブドウの粒を指で摘んだ。
指が不用意に兵部の唇に触れてしまわないように。
だというのに兵部は真木の苦労はおかまいなしだ。
滴る果汁を舐めとるように、舌を伸ばして真木の指に触れる。
「あの、少佐?」
「なに?」
上目遣いに、早くとせがまれれば真木は視線を落として単調作業に没入するより他はない。
房のブドウがなくなるまであと幾つか、なんて無意識に真木は数を数える。ずいぶん先は長そうだった。
このラウンジにいるのは自分たちだけではない。
葉もいるし、カズラやカガリなど子供達もいる。
もちろんたかが果物を剥くぐらい、この我が儘で子供っぽい上司の命令にしてはまだマシな部類に入るだろうし、親が子供にブドウをむいてあげるのはきっと自然なことだろう、うん。
などと言い訳するが、
(……絶対わざとだ)
次も、その次も。
そうと気付いた時にはブドウの半分以上は兵部のお腹に消えていたし、真木の爪と指の間は真紫に染まっていた。
あまやかしすぎはいけません
ちなみにあまやかしすぎると最終的にこうなります
↓
「あれ、葉何読んでるんだい?」
「紅葉に借りたファッション誌」
「ふーん、僕にも見せてよ」
「ほーい」
「もうブドウはよろしいんですか?」
「食べるよ、決まってるじゃないか。でも僕今手が離せないし」
「少佐の口にほおりこんでやりゃいいじゃん」
「よし、葉いいこといった」
「つかそうしないと紅葉の雑誌汚れるし。絶対ベタベタにするなよ」
「ほら、真木はーやーくー」
「…………(ひなどりに餌をあげてる気分だ)」
――――――
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