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☆こちらは絶対可憐チルドレンの私設ファンサイトという名の妄想垂れ流し二次創作サイトです。 ★原作者・出版社・テレビ局・アニメ制作会社等とは一切無関係です。女性向け、腐った妄想垂れ流し注意。☆少佐と愉快な仲間達(幹部3人)を愛でるサイト。葉の可愛さにやられた。兵葉推進してますよ!妄想CP:真木×兵部、真木×葉、兵部×葉、葉×兵部、幹部と少佐を愛でたいです。葉受けが好きかもしれない。何あの可愛いツンデレ。
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今日は日本全国で花火が多いらしいですね。
うちのベランダからも花火がよく見えます^o^キレー

とゆーわけで
葉祭り第一弾はだいぶ前の続きです!

Kids Nap―キズナ―13

拍手[3回]


 


頬を離すと、涙のあとが一筋跡になって残っていた。
白く残った跡を指先で拭いながら兵部は葉の顔をのぞき込んだ。おずおずと戸惑ったような瞳に見返される。

ああ、やっとこっちを見てくれた。
安心して微笑みかけると、ぷいと視線を逸らされてしまったがそれすらも今は嬉しい。さてどうしたものかと考えていると、葉の方から口を開いた。

「アンタは記憶を直せるって聞いた。ほんとなのか?」
「うん、僕に出来ないことはちょっとしかないよ」
「……早く思い出したい」

強張った声音におやと思い顔をあげると、挑発的に見上げる瞳とかちあった。
兵部は手を伸ばし、骨張った白い顎を指先で操るようにして上向かせ距離を詰める。さすがにびくりと肩を緊張させ揺らしたが、それだけだった。

「実は、君をここに連れてすぐに1度試したんだけどね、うまくいかなかったんだよ。拒絶反応が出たんだ。でも、君が僕のことをもう一度信じて受け容れてくれるなら出来るかもしれない。どうする、もう一度試してみるかい?」

突き放した冷たい口調になってしまったのははわざとではない。
兵部自身、葉に拒絶されたことに困惑をもたらすほど衝撃を受けていたのだ。パンドラの子供達とは家族とはいっても血の繋がりがあるわけではないし、共に過ごした時間もそう多くはない。それは、今は幹部と呼ばれているこの子供にしても同じ事で、特に、この子供には拾ってすぐの10年程の間を様々な事情で側にいてやれなかったことを思うと今さらではあるのだが、それでも親以上の気持ちで大切に愛してきたつもりの子供に拒否されたことで兵部もまた正統に傷ついていたのだった。

「……信じる。うん、だいじょうぶ。信じられる。……どうすればいいんだ?」

葉は幾度か口の中で呟いていたが、最後には真っ直ぐ兵部を見上げた。

精神感応を使い心の奥を覗くということは、その人間の精神の内側に潜っていくことだ。もう一度、兵部さえよせつけないあの寂寥とした心象風景に触れるのは兵部にとってもつらいことだった。

「目を瞑ってごらん」

ゆっくりと言い聞かせるように告げた声は掠れていた。
ためらった後睫毛を震わせて瞳を伏せた葉の額に手を添え、腕を伸ばして抱き寄せる。

熱がまだ残っているのか、悪夢に跳ね起きて汗ばんだシャツは既に冷えていたが、触れた体は驚く程熱かった。汗の交じった体臭が鼻腔をくすぐり甘い倒錯に眩暈がした。

瞳を伏せると実際の年よりもかなり幼く見える相貌に、昔のことを思い出さないこともなかったが、それは恐らく幻想だった。伏せた睫毛の影や生意気そうに尖った唇を懐かしい気持ちでなんとはなしに見つめていると、「はやく」と拗ねたような葉の心の声がテレパシーで届いた。

兵部は思いがけず感傷的になっていた自分に気付いて苦笑する。

(記憶を取り戻したら、伝えたいことがくさんあるんだ。君だって僕に言いたいことがあるんだろ?)

応えるように心の中で語りかけると、かざした手の平に力を込めた――
が、少し考えてからその手をひっこめた。

心の奥に入り込むなら、やりかたは一つではない。もちろんあえてそちらを選ぶこともないけれど、どうせなら、「信じる」と言ってくれた葉を自分も信じてみたい気もした。
躊躇は一瞬。思い切って顔を近づける。

「ん…」

掠れた声が戸惑いがちに浮かび上がったが、兵部はかまわず接触を続ける。
キュィィン、と超能力中枢が要請に応じて接触反応を引き起こす。触れた乾いた唇から脳に蓄積された情報を透視みとると、微細な電気信号の情報はすぐに視覚情報に変換された。サイコダイブにより精神と人格の奥に潜って行く感覚は慣れない者が行うと精神に異常をきたすこともあるが兵部には無論その心配はない。すぐに波長を親和させるとゆっくりと心の奥に沈んでいった。


――――

 

「………はっ」
「………ん……」

覚醒はほとんど同時だった。
どんなに長いこと繋がっていたと思えても、夢の中で時間の圧縮を感じるのと同じように、実際は一秒とたっていない。カーテンが風にはためき、またふわりと元の位置に戻る間の刹那の邂逅。

「葉……?」

心の奥に侵入して記憶を弄り扉を開いただけの兵部でさえ、覚醒した瞬間には頭痛にこめかみを押さえたのに、失った膨大な記憶を唐突に叩き込まれた葉の負担は計り知れない。

「葉、だいじょうぶか。おい、葉」

抱きしめたまま恐る恐る顔を上げると、葉は虚ろな瞳を大きく見開いてがくりと力なく腕をぶらさげ俯いていた。その様子は糸の切れた人形を思い出させて兵部は焦る。

「ぁ、ぁあ、ア、ァアアア」

風が哭くように壊れた悲鳴が耳を劈く。彼の持つ本来の超能力とあいまって、強大な破壊力を持つ音波に変わった。びりびりと空気が震え、兵部がとっさにサイコキネシスで防壁を展開していなければ、部屋中が破壊されていただろう。それよりも力の中心にいる葉が、このペースで力を放出し続けていては無事ではすまないだろう。

「ぁあ、ァア…」

堰を切ったように溢れる悲鳴と暴走する思念波。
兵部は予想外の事態に舌打ちをすると、手に力を集中させた。
強制的にもう一度眠らせようかという考えも脳裏を過ぎったが、それでは記憶の融合と再会を後回しにするだけで何の解決にならない。出来るなら今すぐに苦痛と混乱を取り除いてやりたかった。兵部は葉の頭を押さえ込むこむ形で抱き寄せた。

「あ、れ……少佐……?」

思念波の暴走はひとまず治まり、ぼんやりとした瞳が瞬く。
擦れた声が兵部を呼んだ。

「うん、僕だよ。よかった、思い出せたんだね?」
「……そうだ、俺、……あいつらに………捕まって。そっか、結局少佐が助けに来てくれたのか…」
「ううん、もっと早く助けに行ければよかったんだ、ごめんね」
「はは、絶対お説教だと思ったのに」

今度はさっきよりも少しだけしっかりした声。微かに笑みさえ見せて葉はまっすぐに兵部を見上げた。しかし不自然な程ほど明瞭な声音は、ふいに途切れる。

「あれ……でも、少佐……?……だって……」
「葉……?」

兵部は怪訝そうに名前を呼んだ。
その時、それまでまっすぐに見上げていた葉の瞳が何かに脅えるように凍り付いたのが兵部にも見てとれた。振り子のように揺さぶられる動揺。揺さぶられ、空白になったスペースに絶望が流れ込む。

「あ、ゃ、めろ、み、みないで………」

葉は兵部の手をはねのけ首を振った。今度こそ、全てを思い出したのだろう。
取り戻した記憶もそれに付随する感情も、兵部本人にだけは決して知られたくなかったに違いない。かざしたままの手から葉の言葉にならない動揺が兵部にも伝わった。

「…透視ないよ。みなくても知ってるから」

(君がどんなふうに僕のことを思ってくれていたか、僕はちゃんと知っているよ)

兵部は心の中で呟き接触感応の発動を納めると、ただ熱を確かめ触れるだけの指先を滑らせるのだった。

 


――――――

 


ずいぶん長いこと、たくさんのことを忘れていたような気がした。

葉は今日も、彼の一番のお気に入りの船の先端にぶらさがりながら広大な海を眺めていた。
エンジンと波の音しか聞こえない、海と空しか見えない舳先。デッキからは死角にあたるわざわざ来る人間はいなかった。いくら自由に滑空出来るサイコキノとはいえ、反り返った舳先の裏に好んでぶらさがることはしないだろう。

おまけに、まるで蝙蝠のように逆さまになって浮かんでいるが葉はいつだって好きだった。
ここからの景色は格別だ。
紺色の海が空に、水色の空が海に擬態する逆転。青一色のゲシュタルトの一部に自分が溶けて拡散していくような喪失。しかしそれは恐怖ではなくて慈海に抱かれているような、甘やかな錯覚だった。

なんで、あんなきれいさっぱり忘れていられたんだろうなあと、葉は思い返していた。

兵部のおかげで記憶を取り戻したのは数日前のことだったけれど、今ではすっかり他愛のない日常に戻ることが出来た。あのあとすぐ、兵部の知らせを受けてやってきた真木と紅葉に「心配していた」と告げられた時は、昔から心配性な兄とクールなふりをしているが案外情の深い姉の2人の幼いころの面影とだぶって、ああ本当に何一つ忘れていなかったのだと不備なく成し遂げられた記憶の修復に安堵した、と同時にそれだけのことをやってのけた兵部に今さらながら畏れを抱いた。とりとめのないことを考えて居ると、ふいに空気が揺れた。

「いつも思うんだけどさ、それって頭に血が上ったりしないのかい?」

兵部はどこからともなく唐突に空中に現れ、やぁと片手をあげて「良い天気だね」とまるで道ばたで偶然出くわしたような気楽さで葉に声を掛けた。

「……しねーよ。むしろ下がってんじゃね?」
「そんなもんかなぁ」

僕もやってみようかな、と兵部は空中で一回転すると葉を真似て逆さになる。葉の短い癖毛とは違い女性のように切りそろえたボブカットがぱらぱらと零れた。葉は兵部を胡散臭そうに見遣って溜息をつく。

「つか何しにきたんだよジジイ」
「えー、そんなに邪険にすんなよ。今僕暇なんだよね」
「俺は暇じゃないっすよ」

常に人好きのする笑みを張り付けている葉は、一見すると人懐こいようにも見えたがその実懐く人間を選ぶ猫のような性質も持ち合わせている。今日の彼の機嫌は最悪で、というのも兵部と顔をあわせたくなくて避難していたというのにこれでは全く意味がない。いや、それも正しくない。

「……ねぇ葉、どうして僕のこと避けてるんだい?今だって船中探し回ったんだぜ?まだ脳にはダメージが残っているはずだから無理はよくないよ。大人しく中で休んでな」
「はぁ?!何言ってんの?!避けてるのは少佐の方じゃん」

葉は憮然と言い放った。
何かにつけ気にかけられているのはのは薄々感じているが、兵部の態度はあれ以来、肝心なところでは妙によそよそしい。そのためなんとなく顔をあわせたくなくて逃げ回っている、とこういうことなのだ。だから葉が兵部から逃げているのは事実だが、それを先に兵部に言われるとどうにも面白くない。葉はくるりと天地を元に戻すと乱れたぼさぼさ髪を撫でつけた。

「そんな中途半端に気にするくらいなら俺のことはほっといて下さいよ。もうガキじゃないし全然大丈夫だから」

不機嫌な声とともに音波が空気をびりびりと振動させて波を撫でる。
葉はそのまま踵を返すと空を泳ぐようにして飛び立った。

「……まったく、昔はあんなに素直だったのにねぇ」

背中にぼやきが届いた気がしたが、聞こえないふりをしたのだった。

 


 

 Kids Nap―キズナ―13


――――

 

あと2回です。さくさくいきます^^

 

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