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パンドラリターンズのその後。壁にめりこむ可哀想な真木さんで真木兵です。
短いんでさくさくいきます!
18巻レビュー感想は一個下の記事に!
18巻ネタ更新祭り1「真木兵」
「ねーねー。昨日から真木さんの様子がおかしいんだけど、何かあったの??」
《アマリツッコンデヤルナヨ……》
噂の当人を横目に見つつ、こっそり桃太郎に耳打ちしたのは澪だった。
昨日から、いや正確には行方不明だったマッスル・葉・パティの面々と無事合流して帰ってきた一昨日の夜から真木の様子はおかしい。
キッチンにたてば小火を起こすし、朝食のスクランブルエッグには卵の殻どころかまな板のカケラが入っていた。任務の予定表だと渡された紙には「ゴミ収集場所変更のお知らせ」と書かれたおそらくアジトの回覧メモが交じっている。かと思えばモップを持ってつったたままリビングの隅で物思いにふけっている。
この船も皆が集まるラウンジも狭くはないが、もしゃもしゃ髪の大柄な黒スーツでさらに暗雲たちこめるような絡みづらいオーラを放っていれば鬱陶しいことこのうえない。
幸い心優しい少女はそこまでは思わず、厳しいがいつも優しくて頼りになる組織のナンバーツーが元気がないようなのを単純に心配しているだけだった。そういえば、真木がいつも付き従っているボスの姿も一昨日からまだ体の調子が良くないとかで姿を見せなかった。
「でも変だよね。少佐が具合悪いなら真木さんが一番につきっきりのはずなのに。ほんと、どうしちゃったんだろ」
澪はポテトチップスをかじりながらしきりに首を傾げるのだった。
――
「ねー真木。いつまでヘコんでるつもりなんだ。みんな心配してるぜ?」
兵部は、毛足の長いラグマットの上できっちり正座したまま足を崩さない真木をベッドの上から呆れたように見下ろした。
「……俺は、自分が許せませんっ!あなたを守るどころかあんな一撃で…!」
膝の上で握りしめている拳がふるふる震えている。
肩に流れ落ちる黒髪も、ここに標的はいないというのになぜかざわざとうごめいて臨戦態勢をとっていた。
これでは、13年前と変わらない、と真木は心の中で吼えた。
むざむざ兵部を奪われたあの屈辱を晴らすため、人知れず努力もしてきたし成長もしたつもりだ。
しかし実際は何一つ距離を埋めることが出来なかった。
今度あの女管理官と相対したら、必ずや、例え一矢報いるまではいかずとも兵部を護るために彼の傍らに立つと決めていたのに。
兵部を護るどころか一撃で地に沈み、側についていることも適わなかった。
あの雪辱を埋めるどころかさらに悔恨を重ねただけだった。
それどころか最悪なことに自分が目を回しているあいだ、兵部は一時呼吸停止し生死の境をさまよったのだという。ならばバベルに奪われるほうが余程マシだ、と真木は思った。
つまり今回のことは真木にとって想像出来る最悪の事態が全てドミノのように連鎖し起こったということになる。真木はこれ以上ないほど落ち込んでいた。
「絶望した……」
「はっ?」
「あなたを危険に晒してしまうなんて俺には生きている価値がない!死にます!!」
自らの炭素繊維を依った髪で首を吊りかねないほど悲壮な様子で真木は床につっぷした。
兵部は予想以上に打ちひしがれた養い子の様子に、笑えばいいのか馬鹿なことをいうなと叱ればいいのかわからず、結局心の内でこっそりと微笑むと優しく彼の名前を呼んだ。
「真木。ちょっとこっちにおいで」
その言葉にも真木は動かない。
正座したまま上半身をおり、祈るように平伏すように突っ伏したまま微動だにしなかった。
兵部がサイコキネシスでちょいちょい、と髪をひっぱるとようやく顔をあげ、膝を兵部の枕元に進めた。
「あのなあ。僕が呼んだらすぐ来いよ。あともっとこっち」
真木の膝は兵部のベッドの枕元の足にくっつくほどに近く、これ以上は近寄ることは出来ない。
真木が言葉を失うと、兵部はテレポートで真木の体を、自分の腕の中に引き寄せた。
どすん、とシーツが跳ねて兵部が笑う。まるで子供のように抱きしめられる感触に、真木は目を白黒させた。
「うわああ!なにするんですかアンタは!」
「おまえは悪くないよ。だいたい、不二子さんは僕と同じくらいの力を持ってるんだよ?それとも、おまえは僕に敵うつもりでいるのかい?」
「そ、ぅいう問題じゃありません……」
真木は力なく項垂れた。
語尾が震え、今にも泣き出しそうだと兵部は思ったが、当然のことながらそれは幻覚だった。
時折、兵部には真木が出会ったころの小さな子供のように見えることがあった。
懐かしく、そして長い時を生きてきた兵部にはつい最近の記憶。
「悪いと思ってるならさ、しばらくここにいてよ。おまえにだかれていると、嫌な夢を見ないですむ。皆本のせいでさぁ、あれから昔の夢ばっかみるんだ」
必ずしも、それは「嫌」な夢ではないのだが、懐かしむにはあまりにも遠すぎた。
「わかりました……っ、あなたが眠るまでなら」
「寝てからも、だろ?あと夢を見ないためには適度な運動が必要だと思うなぁ」
兵部はにや
にやと、意地の悪い笑みを浮かべて真木の頬にキスをした。
真木は言葉を失って頬を染めたが、すでに「その気」になりつつあるのは回された腕に力が籠もったことからも伝わる。
兵部は満足すると、甘える猫のように体を擦り寄せるのだった。
――――――
真木さんはそりゃあもう凹んだと思われます\(^o^)/
めりこむ真木さんはプライスレス。
お気に召したらぽちっといただけたら嬉しいですv
残りは真木葉・真木紅葉・兵部葉・兵部紅葉・葉紅葉です