[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「真木、おなか減った」
「さっき夕食食べたばかりでしょう」
料亭の仕出しにも劣らない重箱につめた和食懐石を一人前ぺろりとたいらげ、食後は葉と桃太郎とテレビゲームに勤しみ。今日はもう何も問題を起こすことはないだろうと、自室にひっこんでやりかけの書類整理に手をつけ始めようとした時だった。
……兵部がノックもなしに(ついでに言うならドアを開けることなく)真木の部屋に現れたのは。
「あ、今僕のことボケ老人とか思ったろ?!」
「思ってませんそんな恐ろしい!」
ちなみに真木のこの反論は、兵部が「ボケ」と発音するかしないかというあたりに間髪いれずにかぶせられているのである。
「だって本当にお腹すいたんだもん」
「なら夜食でも作りましょうか?」
兵部の右腕を自負する真木としては、本当に兵部が空腹を訴えているのならそくざになんとかしてやりたい。お茶漬けなら腹にもたまるし消化にもいいし、と頭の中で算段をつける。
「カップラーメンが食べたいな」
「だめです、ただでさえ栄養に悪いのに夜中に食べたら胃にも肌にも毒ですよ」
「真木のケチ-。じゃあいいよ、澪にもらいにいくから」
確かに澪なら、自室にインスタント食品をまだ残している可能性はあるし、兵部にねだられたら喜んで差し出すだろう。しかし偏食は子供にも老人にもよくないと思うのだ。
「待ってください…!」
「なに、カップ麺作ってくれるの?」
「いえ、それは……違いますけど」
だいたいカップ麺を作るってなんだ。お湯を入れて3分待つだけだろう。
「あっそ。じゃあいいよ。僕はもう行く」
くるりと踵を返しドアに向かう兵部をあわてて引き留める。
真木は兵部の前に回り込んだ。
「じゃまだよ、どいて」
「……どうしても行くんですか」
「うん。それとも、僕に泣いてすがってキスしてくれたら行かないでやってもいいけど」
兵部は、お腹すいたなー、とにっこり微笑んだ。
その笑みに、
(俺が食われる)
と真木が心の中で思ったか思っていないかは定かでないが、
「では、今温かいココア淹れて差し上げますから、それからでいいですか?」
と真木が提案すると。
「ん、わかった」
兵部はやたら神妙に頷いて、真木のベッドに大人しく腰掛けたのだった。
2じぶんをしゅじんだとにんしきさせましょう
(餌付けはしつけの第一歩です)