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とゆーわけで今日から三日間はハロウィンを祭るよ!
1紅葉=魔女っ子
2真木=狼男
3葉=ドラキュラ
4兵部=マミー(包帯男)、
5最後にハロウィン当日ネタの予定。
ただしどれも小ネタレベルに短いよ!
第1弾は紅葉=魔女ッ子で真木兵です。
『ポモナの果実』
女の子は誰でも生まれつき魔法の使い方を知っているのだという。
それはおばあさんから母親に、母親から娘に伝えられたりするものであったり、たとえ親がいなくても、
遙か昔から遺伝子の輪廻に刻み込まれている記憶だったりするのだ。
そんな他愛のないおとぎ話を聞いたのはいつだったか。
紅葉は遅いブランチがわりのリンゴのコンポートをつつきながら、目の前で同じく昼食を食べているボスと、その隣で食器を並べたり飲み物を注いだりと甲斐甲斐しく世話する幼なじみの会話をぼんやりと眺めていた。
「少佐、チャーハンのグリンピースだけ綺麗に残すとか、そういう無駄なスキル発揮した嫌がらせはやめてください」
「いや、これ結構手間かかるんだぜ?」
「子供が真似したらどうするんです」
「手先が器用になっていいと思うけど」
「バカなこと言ってないで残さず全部食べてください」
「だって苦いじゃん。真木は青豆好きなの?全部食べれる?」
「ええ、体にいいですからね。好きですよ」
「僕よりも?」
「は??」
――ガタンッ
紅葉は深皿の中のリンゴにグサリとフォークをつきたてて立ち上がった。
真木の作った今日のおやつも、とてつもなく甘い。ヨーグルトがまだ冷蔵庫に残っていたはずだから取りに行こうと席を立つ。この際賞味期限ぎりぎりの酸っぱいやつがいいかもしれない。
「・・・・・・口にあわなかったか?」
冷蔵庫をがさごそとひっかき回す紅葉に、真木は皿を片づけながら訝しげに聞いた。これから兵部に食後の杏仁豆腐とジャスミン茶を出すようだ。トレイを片手に、スーツの上にサロンエプロンという、格式ある屋敷の給仕みたいな格好が妙に似合っている。
「甘過ぎなの。あとどうでもいいけど、そーゆー会話、私や葉の前以外ではしないでよ。私たちが恥ずかしいから」
「あー、真木ってば怒られてやんの」
「少佐は黙っててください」
「いいのよ、少佐はそのままで」
「ふふ、紅葉はいい子だね」
「あらありがと」
「それに比べて真木は・・・・・・あーあ、昔はあんなに素直だったのになぁ」
そこではじめて、紅葉は兵部の様子がいつもと違うことに気づいた。軽口の応酬はいつものことだが、真木のほうを見もしないでマンゴーソースを口に運ぶ兵部は、本当に機嫌が悪そうに見えた。
「・・・・・・ねぇ真木ちゃん。少佐と何かあったの?」
紅葉は空になった皿を片づけながら、うなだれる真木を肘でつついた。
「いや、その・・・・・・」
真木は自分の口元を大きな手の平でおおいかくし、目を反らす。その横顔はほんのり赤らんでいるようだった。紅葉はまだ青いリンゴをそのままかじったような顔をしてため息をついた。
「わかった、言わなくていいわよ。早く仲直りしてね」
――――
女の子は誰でも魔法使いなのだという。
だから枯れた花束を集めて枕元において楽しい夢を見る魔法を使えるのだし、月を眺めて好きな人に想いを届けるテレパシーの魔法も知っている。
満月の夜にコップ一杯の水を窓辺において、美しく変身出来る飲み薬の作り方を知っている。
真夜中にリンゴを食べて後ろを振り向かずに鏡を覗くと、未来の伴侶の姿を知れるという予知の方法も知っている。だから当然、喧嘩している恋人同士が再び仲直りする魔法だって知っているのだ。
紅葉は冷蔵庫から余った林檎を一つ拝借したのだった。
そして次の日の朝。というか昼。
「おはよう、少佐。今日もまたずいぶんお寝坊ね」
「おはよう。いい朝だねえ」
「ものっすごい曇ってるけどね」
リビングの大きなテーブルで、ずるずる麺を口に運びながら珍しく新聞など広げている兵部は、紅葉の声ににこやかに顔をあげた。兵部の食べている今日の朝食はずいぶん質素でお手軽な、メリットは「早い安い美味い」くらいしかなさそうな、……有り体に言ってしまえばカップラーメンだった。
「あれ、真木ちゃんは?まだ寝てるの?」
紅葉はきょろきょろとキッチンを見回した。
「ううん、真木は朝からあっちこっち飛び回ってるよ。僕の分までやってくれるんだって。よく働くね」
「少佐も自分の仕事ならちょっとは手伝ってあげたら?」
「働いたら負けかなって思ってる」
ずる、と百円均一なのに価格崩壊を起こして二個で百円とたたき売りされた一個五十円のシーフードヌードルをすすった。名称という名のアイデンティティの喪失だ。
その時真木が寝不足なのか、目の下に隈さえ作り、妙にやつれた顔で現れた。
「しょ、少佐すみません…!こんな時間だとは気付かず…今から昼飯、…ってそんなもん食わないでください今ちゃんとした昼飯作るので!!」
「てゆーかカップ麺もおいしいよ」
「年寄りが朝からジャンクフード食べていいわけないでしょう!」
「アーアー、聞こえなーい」
口論のレベルは昨日と似たり寄ったりだ。
紅葉は「たまに食べると確かにおいしいわよね」と同意して戸棚のカップラーメンを漁った。
「――文句があるなら少しは協力してくださ」
「腰痛いなー背中も痛いなー。足もいたいなー。なんか疲れてるから油っぽいもの食べたいなー」
――バタン。
紅葉は乱暴に観音開きの戸棚の扉を閉めた。
「二人とも。だからそういう会話は他の人の前ではやめてって言ってるじゃない」
「ごめんね。紅葉は空気読める良い子だね。ほら、真木も見習えよ」
「ううう・・・・・少佐はどうぞ好きなだけ休んでください。カップ麺もお好きなだけどうぞ」
しかし今日は兵部は怒っているくせに、とても機嫌がよさそうだった。
よほど昨夜恐ろしいことがあったのか。真木は顔を真っ赤にしたり真っ青にしたりと忙しい。
はたして魔法が効いたのか、はたまた二人にとってはいつものことなのか。
「冗談だよ、君の作ったもののほうが美味しいから」
そういうことにしておこう。
『ポモナの果実』
――――――
ポモナ=林檎
ハロウィンの起源の一つになった女神の名前で、ハロウィンでは占ったり食べたりしたりで林檎で遊ぶそうです。
魔法=おまじない、くらいの意味ですが。
少佐が前日不機嫌だったわけは、真木さんが少佐の体調不良だか忙しいとかを理由に、少佐が誘っても手を出さなかったから。少佐が次の日疲れていながらも機嫌がいいのは、真木さんがいっぱい頑張ってくれたからです^^^^って感じで一つ。
とゆわーけで次は『狼男』で真木さんです。
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