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月を見ると狼に変身する人間は様々なおとぎ話にいるが、夜になると狼になる人間もまた、一定数いるのである。月が出てなくても変身するので、こちらの方が厄介かもしれないが。
「ま、おまえには関係ない話だったな。どっちかってゆーと首輪のついた犬みたいだ」
兵部はシャワールームを出てただ雫だけをぽたぽたと溢し、一糸纏わぬまま恥ずかし気なく薄暗い部屋を横切ると、ベッドの縁に腰掛け足の上で指を組んだ。
枕元のアンティークランプの灯り一つしかないこの部屋はぼんやりとしたオレンジのまあるい光が一つある他は真っ暗闇だった。兵部が指先で手招きすると、部屋の隅の暗がりから、闇に完全に同化していた黒ずくめ黒髪の男がぬっと現れた。どうやらかなり長い時間、兵部をそこで待っていたようだった。
惜しげもなく晒された兵部の白い裸体と銀色の髪が、柔らかなランプの灯りを反射し妖しく輝いている。
兵部の前に立ち尽くしてい真木は目のやり場に困ったのか、すっと瞳を伏せた。
「ほら、ワンって鳴いてみろよ」
兵部は足を組み替えて唇の端をつり上げる。
「……」
「出来ないのか?」
兵部は面白そうに首を傾げた。
「……うぅ」
真木は唸った。獣のようだと言えないことはなかったが、ずいぶん情けないうなりごえだった。
「…わ、ワン…」
「フフ、良く出来ました。ご褒美をあげなきゃな」
兵部が悪戯めいた笑みをうかべると、空気が軽く震動し、彼の手の平に黒い革の輪が出現した。
「首輪。真木は犬だからな。きっと似合うよ。たまにはこういうのもイイだろ?」
兵部は手の平ごと黒い革の輪を突き出し真木を手招きした。
兵部は無防備な裸身を晒しているというのに、目には見えない光の衣を纏っているかのように胸を反らし悠然と微笑んでいた。
真木は目を伏せたまま一歩近づき、そして。
「……悪戯が過ぎますよ、少佐」
黒い革の枷を、兵部の手ごととる。
兵部は大きな瞳をぱちぱちと瞬かせて、強く握られた手首を、そして逆光でよく見えない真木の顔を、呆気に取られて見上げた。
「オオカミがお好みでしたっけ?」
金具を外すと、カチャリと微かな音がした。
真木は兵部の細い首筋にぴたりと革をおしつけ、巻き付けると銀色の留め金をはめた。
「そうは言ってないだろ。でもオスくさいオオカミを躾けるのも悪くないな」
「そういうことにしておきましょう」
オレンジ色のランプが丸いスクリーンのように壁を淡く照らし出す。
黒い大きな影が、ベッドに座る小柄な人影に重なった。
月とランタン。
――――――
ベタな感じだけど、こーゆの好きだよ!!!!!
一応この真木さんやる気満々です。そりゃあ少佐があられもない姿で誘うんだもの。
なんとなく、少佐は全裸でも恥ずかしがらないというか堂々としすぎて神々しい感じが似合うと思う。
次は葉で吸血鬼です。
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