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葉祭り更新13日目!今日から4日間は真木兵になります。
そろそろ折り返し地点!いやー一月って早いぜ。
R18とありますが今回はR18じゃないです。
――
【幸】コウ・しあわせ
象形。手にはめる手枷を描いたもので、もと、手枷の意。
(漢字源第4版より抜粋)
ハッピーエンディング
幸福論1
人間だったものの残骸を見下ろす兵部の目には何の感慨も見あたらなかった。
目指す道に立ちふさがるなら踏み越えるし必要なら力でもって排除もするが、正義なんて空っぽの言葉に興味はなかった。いつの時代も戦いとは理想と理想のぶつかり合いなのだ。だからたまたま目指す未来に立ちふさがった名も知らないノーマルの顛末に興味わかず、それゆえまだ暖かい死体に視線を落としている兵部が何を考えているかは、氷の彫像のような整った面差しからはわからない。
「……兵部少佐、お怪我は」
ざり、と砂煙を踏み背後に現れた彼の忠実な部下の気配に、兵部は銀の髪を揺らしてゆっくりと振り返り、はじめて人間らしい笑みを見せた。
「ないよ。ただちょっと服が汚れちゃったかな」
凛と響く少年のような涼やかな笑い声は、たった今まだ湯気のあがる死体の山を作った残忍な人間とは到底思えなかったが、ただの少年のものとも違っていた。抑えきれない殺気が空気を冴えさせ、向こうの茂みから鳥の群れが大騒ぎをして飛び立つ。その騒々しさに苦笑しながら、兵部はようやく普段の、とりとめのない飄々とした気配を取り戻した。
「君になら安心して背中を預けられるよ。昔はほんの小さなガキンチョだったのにね」
「いえ、まだ自分は未熟ですから」
真木は主からの労いの言葉にも表情一つ変えなかったが、言葉の間の取り方だとかいかめしい肩の揺れ方に彼なりの喜色が見て取れて、真木を幼い頃から良く知る兵部はそれなりに満足した様子で気安く背中を叩いた。
ダークスーツの肩をぽんと叩く音を合図に空間が歪み2人の姿が消える。
あとには瓦礫に埋もれた廃墟だけが残った。
2人が瞬間移動で引き上げると、カタストロフィ号はいつも通り順風満帆の航海を続けていた。
上着だけ脱いでラウンジで真木の淹れたお茶をすする兵部は、持ち場のない構成員や真木以外の幹部達と他愛ない雑談をしたり、ぽつりぽつりとやってくる幼い子供達の相手をしたり、適当に仕事の指示をだしたり(この場合の適当とは適切の意味ではなく、いいかげん、の意である)、とくつろぐことに余念がない。
真木はといえば、弟分でもあるもう1人の幹部に「真木さんってホント部下兼秘書兼家政婦兼主夫兼……ああこれも追加で」と白いレースのついたヘッドドレス(メイド服に良く似合いそうなカチューシャだった)を無理矢理装着させられている。それを兵部がゲラゲラと笑いながら見ているどころかフリルエプロンを交換テレポートでけしかけるという、呆れる程いつもどおりの光景が繰り広げられていた。
いつもどおりでないのは、兵部がロイヤルスイートを改造した私室に引っ込んでからのことである。
扉が閉まるのと同時にふわりと力強い腕に後ろから抱きすくめられて兵部は硬直した。
「……本当に怪我はありませんか?」
「ないって言ってるだろ。真木は心配性だな」
声に含まれる熱っぽい湿度に気付かないふりをして兵部は軽い調子で言ったが、
「確かめても良いですか」
と、耳たぶに寄せられた唇から紡がれる声に、今度こそ身動きがとれなくなった。
真木は兵部の沈黙を了承と受け取ると、彼の一番良いやり方で、背後から体の前に回した腕で、ぷちんぷちんと学ランのホックを外した。
兵部は、小さく息を呑んで身を捩ったが真木は頓着せずに指を進める。
黒いストイックな制服を床に落とし、ついで、白いシャツのボタンも同じように外す。骨張った指が肌を滑る感触に兵部は微かに喘いだ。
「何か期待してるんですか?」
「ちがう…!」
いつもどおりでない、と兵部は思い込んでいたが、自分に絶対の忠誠を誓っているはずの養い子がこういった手段に訴えるのは、実のところすっかりお馴染みになってしまっていたのだった。
柔らかい耳たぶを食み、産毛をくすぐり、脇腹を不必要にくすぐる手つきに兵部は身を捩りながら、
「飼い犬に手を噛まれるとはこういうことかな」とどこか他人事のようにぼんやりと思い返していた。
体の関係は、だいぶ前からあった。
まだ真木が10代のころからだから、恋人どうしのように愛をかわし欲を貪りあう関係自体はもう10年近く続いていることになる。
思春期の肉体を保ったままの兵部が時には意思に反して底なしの闇のように深く透き通った瞳を熱にうるませ、縋るように手を伸ばす。真木はいつだって拒絶することはなく求められるまま求めるまま、愛おしむ手つきで丁寧に熱を放出に促した。幼いころ気を張り詰めていて甘えられなかった時間を埋めるように、兵部の白い肢体を腕の中に閉じ込めて、色づく膚にキスをして何度も貪る。
とはいえやはり「普通の」恋人同士というふうにはなかなか行かないのは、潜在能力は高いはずなのにその力を兵部のためにしか使わず、兵部の赦しを得てはじめて己を解放させるところがあるような真木の潔癖さのせいだろう。それは閨での行為でも変わらない。
抱かれる立場の兵部が求めた時しか応じず、それさえも兵部の体の調子に少しでも影があるなら途中で中断するくらいだ。そんな時だって、ひとまず手淫か口淫で兵部を満足させてから寝入ったところに毛布をかけ、そのあと自分も昂ぶった熱を処理するといった具合である。
全ては、そんなぬるまったい砂糖水のような関係に焦れた兵部が苛立ち紛れ、からかい半分に悪戯をしかけたのが原因だった。兵部のためなら何でもする、と真木が真面目くさった面持ちでいうから、からかってみたくなったのだ。
「 」
と。
笑って投げかけた言葉に、「冗談はやめてください」といつものように困惑した仏頂面を見せるか、顔を真っ赤にして怒り出すか、いずれにせよ楽しい想像だったのに、その時真木の見せた顔は今まで見たことのないのものだったので兵部は機嫌を悪くした。そしてその時から2人の関係は微かに変化したように見えた。
すなわち、支配-被支配の表面的な逆転。
「ぁ、んっ……」
「何を考えていたんですか?」
大きな手の平が下履きの中に滑り込み、兵部は意識を現実に引き戻された。
「ふん。…別になにも」
掠れる声で答えると、密着した襟元からオーデコロンが媚薬のように漂う。
真木の手は遠慮も躊躇もなく、ベルトの留め金を外し寛げると狭い下着の中にまで入り込んだ。
なだらかな下腹を撫で、熱を持ち始めた陰茎を指でなぞると片手につつむようにして力を入れる。最初の言葉どおり「怪我がないか見ている」というのは勿論口実のはずだったが、まさぐるように兵部の肌を這うもう片手に粗暴さはない。
「んっ、やめ、せめてベッドで」
焦れる愛撫にたまらず兵部が頭を振る。
「だめです。ほら、壁に手をついて」
半身を握り込まれたまま、肌を探っていた手に、もが腕を取られ、目の前の壁に難なく縫い付けられた。
兵部は目の前に白い壁が広がり、思わず瞑目した。後ろからぴたりと密着する熱さに息が出来ない。
力で押しのけることは兵部にとっては容易いし屈辱にかっと頬があつくなったが、頭の天辺から足の先まで痺れる甘い快楽を知ってしまったからには、もうこの力強い腕の中から逃れることは出来そうになかった。
ハッピーエンディング
幸福論1
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人前ではヘタレな忠犬、2人きりになったら強引な狂犬になるよ、な真木さんです。
次回はこれの直接の続きではないんですけどだんだんアブノーマルになってきますすみません
あっとこれは一応下剋上ではないです。むしろ究極の服従的な。主従萌え大好きです!!!
ちなみに【幸】は、どこをどう見ればこれが手枷の象形文字になるんだ!と調べたら、どうやら
土
V ←の部分が手首でそれを上下にはさむように留め具が来ているというのを表したものみたいです
干
お気に召したらぽちっといただけたら嬉しいですv