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17巻記念更新祭り第五弾☆
今度はハーマイオニー兵部ネタです。
バベルがもし、メカ皆本の他にメカ兵部も作っていたら、って感じで。
見た目はあの不二子さんに女装させられていた兵部さん。
性格などはメカ皆本と似た感じで(なにせ同じロボだし)。
真木兵ですが真木さんがひたすら可哀想です。
マリオネット・パニック
「真木、ちょっとこいつを預かってくれるかい?」
「……はっ?」
突如内々に呼び出されて少佐の部屋に来て見れば、そこにいたのは、少佐と、少佐によく似た、少佐の半分ほどの背丈しかない、小さな、少佐だった。
ちょこーんと、居心地悪そうに少佐の体に半分隠れておどおどしている小さな少佐は(ああややこしい)、見下ろす俺と目が合うと、ぱっと隠れてしまった。
「おいおい、あまり脅かしてやるなよ」
「なんです?これ」
見間違いじゃないかともう一度少佐の後ろに目を懲らすが、それは幻覚でも催眠でもなかった。
少佐に良く似た――そして先日バベルの監視係からも報告があった――1/1スケール自律可動人形――
「メカ兵部・ハーマイオニーと言います。どうぞよろしくお願いします」
ちょこん、と頭を下げて見上げる小さい少佐はまさに可憐な少佐であり少佐そのもので
「こら、何混乱してるんだよ」
少佐に頭を叩かれた。
(おまけに視線がすごく冷たい)。
「最近バベルの開発室で極秘に作られたのは皆本光一のメカだと記憶しておりますが?そして少佐が連れ帰ろうとしたら自爆プログラムが働いて破壊されたとか」
エヘンと咳払いして体面を取り繕うが少佐の視線はブリザードのように凍ったままだった。
(だがそこがいい)。
「うん、あれはもう壊れちゃったんだけどね。どうやら、バベルの連中、皆本の人形を作る前に僕のメカも作っていたみたいでさ」
「……それが、コレですか?」
今度は割と冷静さを取り戻し、メカ兵部(ややこしいので遺憾ながら尊称抜きでそう呼ばせてもらう)、を見下ろした。機械仕掛けの人形とは言え柔らかそうな皮膚の質感も、なめらかな間接の動きも、
「その、なんというか……良く出来てますね」
「そんな微妙な世辞はいらないよ」
ふんっと不機嫌そうにそっぽを向く少佐の銀髪が揺れる。
そして初めて少佐とメカ兵部の大きな違いに気付いた。
「黒髪……?ああ、少佐のお小さい時のお姿に似てますね」
「……不二子さんが監修して作らせたらしい。全く、どこまで悪趣味なんだ」
少佐は余程怒りがたまっていたのか、バンと壁を叩いた。
それに反応してメカ兵部がひっと鋭く叫んで肩をちぢこませた。
「ああ、君のせいじゃない。ごめんね」
少佐は、苦笑してメカ兵部の頭を撫でた。こうしてみるとまるで良く似た兄弟のようだ。
「でもなんでこんな着物なんです?」
少佐の後ろに隠れていたので最初はよくわからなかったのだが、メカ兵部の身につけている衣装は、薄桃色の着物にフリルのついた前掛け、一昔前の喫茶室で働く娘のような、カフェの女給のような恰好だった。
「……へぇえええ、その理由を聞きたいのかい?」
「だって、よく似合ってますがこれは女性の…」
「真ぁ木ぃ?本当に、理由を 聞 き た い?」
追って被さる少佐の異様な殺気に、俺はぶんぶんと首を横に振った。
俺だって命は惜しい。
「い、いえ。やめておきます」
「うん、それが懸命だね」
またも怯えて涙目でぷるぷる震えるメカ兵部の頭を撫で、少佐はにっこり微笑んだ。
正直俺も泣きたい。
「で、これ……いえ、この子をどうするんですか?」
「だから、しばらく預かって、って最初に頼んだじゃないか。聞いてなかったのか?」
少佐はぷりぷりと怒っているが、俺にそんな余裕はなかった。
でも確かにそんなことを言っていたようだと思い出すと、神妙に頷いた。
「それは構いませんが……」
「今からちょっとバベルにお礼参りしてくるから。僕と同じ姿だから処分するのも気が引けてね。この子はひとまずここに置こうとは思うんだが、他のやつらに見つかったら面倒だから君に頼もうと思って」
「確かに。少佐の姿ですしね」
パンドラの首領たる少佐の威厳の問題もあるが、差し迫ったところではマッスルなどに見つかったらどんな騒ぎになるかは想像するのも億劫だった。(もちろん彼が悪い奴でないことはよく知っているが)。
「うん、こんなこと君にしか頼めないよ。引き受けてくれる?」
少佐は甘えるように腕を回し、ふわりと浮かび上がると聞き分けの良い子供にするように、俺の額に唇を押しつけた。育ての親で自分の敬愛する主人なのに、自分よりも幼い少年のようにも見えるこの恋人のギャップに、眩暈を感じる。
「わかりました」
と頷いて手を取って指の先にうやうやしく口付けると、メカ兵部が頬を真っ赤に染めてこちらを見上げていた。(どういう仕組みになっているのだ)。
こうしてメカ兵部を預かったわけなのだが、
「ええと、真木さん、ありがとうございました」
「真木でいい。少佐の姿のおまえにそう呼ばれると調子が狂う」
「いえ、そういうわけには。僕は一応メイド用のロボットとして皆さんに失礼のないようプログラムされていますので」
もじもじとエプロンの裾を引っ張って俯く少年ロボットに、妙な気持ちになりながら、「そうか」とやや裏返った声で返事をした。
とりあえず俺の自室のソファに座らせたのだが、よそのうちに置き去りにされた子供のように、きちんと揃えた足を居心地悪そうにそわそわさせている。そのたびに髪につけた鈴がしゃらしゃら鳴るのがまた心臓に悪い。
「あの、迷惑ではなかったでしょうか?」
「いやなに――兵部少佐の形代がバベルにあるより、こちらで保護出来たほうが我々にとってもずっといい。だから気にすることはないんだ」
「優しいんですね、真木さん」
にっこり微笑んで首を傾げると、しゃらりとリボンの鈴が鳴り、心臓が口から飛び出そうになる。
(早く帰ってきてください少佐あぁぁぁああ!)
と心の中で叫ぶことしか出来なかった。
マリオネット・パニック!
―――
メカ兵部ハーマイオニーが欲しいです。
ところで「でも僕はバベルの備品です」って台詞エロイよね。
備品扱いされて使い捨てられる従順な奴隷な兵b……いやいやなんでもない。
お気に召したらぽちっといただけたら嬉しいですv