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あとでもう一つくらい更新したいです。
葉のお気に入りのキャンディについて妄想がとまらない!少佐にもらったのかなーっていう妄想と、
もっと物理的に、飴をなめているあいだは口をとじている=力の暴走を抑えることができるってこととあと葉の能力的にもう一つあって、最初はちっちゃな葉に与えた餌付け的な意味があったのかなーっという妄想です。
キャンディ・ハート
甘くて壊れやすいきみ
ふわふわの髪、ふにふにのほっぺた。
崩れたガレキの中心にぺったりとうずくまり目尻を真っ赤にそめて泣き叫んでいる幼子は天使のように愛らしく、思わず手を差しのべてしまいたくなるほどだったが、つい5分前までこ洒落たワンルームだったマンションの一室を、まるでミサイルが撃ち込まれた危険区域のように変えたのもまたこの子供だった。
爆発のような癇癪がおさまっても、ひっく、ひっく、と苦しそうな泣き声が断続的に響く廃墟。
兵部は「また派手にやったねぇ」と頭をかいて子供の元にテレポートした。
「葉。もう、泣かなくていいんだよ?」
兵部が、たった一人絶望の中心に置き去りにされたように泣く子供を抱き上げた。
背を宥めるように何度もすると、葉はきゅっと兵部の袖を掴んで顔をあげる。
「ふぇ…しょうさぁ…」
「いいこ、いいこ。もう平気だよ?」
「ぁ、……のね、んぅ、…ひっく、うわあああーーん」
泣き止もうとしても、すぐに泣き止めるわけではない。
しゃくりあげるような発作が続き、葉は何度も咳に噎せる。
いつもなら、こうして背を撫でてやるとすぐに泣き止むのに。
何が気にいらないのだろうかとこれまで当然子育てなどしたことのない兵部は、困惑したまま葉をあやした。
一度は治まりかけた泣き声は、再び鋭さを増して壁の残骸を粉塵に、天井を真っ青な空にかえていく。
崩れ落ちる天井のコンクリートの弾道を念動力で逸らし、兵部は溜息をついた。
それでも、葉が泣くことでどれだけ住み処が破壊されても、兵部は力で押さえつけるつもりにはなれなかった。
まだ幼い子供が、感情を制御出来ないのは当然で、持て余した力の処理に能力が追いつかないのも当然なのだ。全身を震わせて感情を訴える子供は、人とは違う(普通人とはもちろん、サイコキノの中でも音波を操る葉は特殊といえた)力を持っているだけで罪はない。
今日も泣き止むまで待ってみようと背を撫で宥めていると、金切り声に悲痛な色が交じりだした。
「ぅああああん、いたい、いたいよ、うぁあん」
痛い、と泣きながら訴える葉に兵部はぎょっとする。
いつもの癇癪かと完全に油断していたことに舌打ちすると、撫でる手を額に滑らせサイコメトリーを開始する。
原因は、すぐにわかった。
葉はサイコキネシスを音波に乗せてこうして泣き声で周囲を片っ端から破壊する。
力の中心で音波を発生させる葉の鼓膜に負担がかかっていたのだった。
泣き止めば音波も痛みも治まるが、痛いから泣き止むことはできない。
悪循環だ。
「耳が痛いのか?」
こくこくと力なく訴える葉に兵部は焦る。
何とか、気を引いて泣き止ませるものはないだろうか。
オモチャを持ち歩いたりはしないし、ガレキに埋もれたこの部屋にもうまともなものはない。
どこかにテレポートしようと思った時、一応つっこんだポケットに、空っぽだと思っていたポケットに、何かが入っていた。
指先にひっかかったそれは、紅く輝くイチゴのドロップだった。
これならちょうどいい、と兵部は手の平にドロップを載せて微笑んだ。
「ほーら、いいものをあげる。これを舐めてごらん。耳が痛いの、なおるから」
「ふぇ」
「すぐに飲み込んじゃだめだよ」
泣き続ける葉は、それでも兵部が唇に飴を押し当てるとするりと小さな舌で引き寄せた。
耳が痛い時は飴をなめるなどして唾を飲み込むといい、というのは気圧の変化による耳管の異常に限らない。
「どう?おいしいだろ?」
葉はころころと口の中で転がし、ときおり溶けた甘いシロップを飲み込んでいるようだった。
気を逸らされたことを唾液を飲み込んだことで痛みが薄れていくのを透視し、兵部はほっと一安心する。
おまけに、飴をなめている間は口を閉ざしているのだから泣かなくてすむのだ。
ひっく、ひっく、とまだ苦しそうではあるがだいぶおさまった吐息が静かな部屋に響く。
「もう痛くないかい?」
「んくっ……へーき……」
泣きはらしてはれぼったくなった目を擦り、葉は最後のひとかけらをこくりと飲み込んだ。
「美味しかった?」
そう問えば、葉はもうないの、とつぶらな瞳で兵部を見上げる。
――泣いてたカラスがもう笑った。
そんな古めかしいフレーズが兵部の脳裏に過ぎって苦笑する。
それでも、泣いているよりはずっといい。
おまけにカラスというよりは生まれたての赤毛のヒナだ。
兵部はちょっと待ってな、と言うと葉を抱いたまま辛うじて部屋といえる原型を留めるな隣のリビングにテレポートで移動した。
そしてリビングには、避難させておいた真木と紅葉がおろおろと立ちすくんでいた。
二人は、兵部と泣き止んだ葉を見止めてかけよった。
「葉、少佐、大丈夫ですか?」
「ごめんね二人とも。また引っ越さなきゃね。ちょっと不自由だけど我慢してくれるかい?」
「あたりまえじゃない!私達、ずっと一緒なのよ!」
「家族」の無事な姿に安堵し元気よく頷く真木と紅葉の頭を順に撫でると、キッチンの戸棚をごそごそと漁った。
「何してるんですか?」
「んーどこにあったかなあ……この前何かのおまけでもらった気がしたんだけど…あああった!」
子供のように声を弾ませて、棚の奥から兵部が取り出したのは、くるりと飴が円を描いた、棒付きのキャンディーだった。
「はい、葉」
「え?」
兵部は葉に棒付きキャンディーを見せると、葉はきょとんとした瞳で首を傾げた。
あげるよ、と兵部が笑うと、小さな手をおずおずと差し出してそれをうけとった。
「これは魔法のキャンディーだよ。これから、葉が泣きたくなったり、泣いて耳が痛くなったりしたら、飴を舐めるといい。すぐに痛いのも、いやなことも忘れさせてくれるよ」
葉は意味がわからなかったのか、それとも目の前の見るからに甘そうなキャンディに心を奪われているのか、にっこり笑うとさきほどのドロップの数十倍ありそうな大きな棒付きキャンディに小さな舌を伸ばしたのだった。
――泣きたくなったり、力を制御できなくなりそうだったら、これを食べて。
兵部は力を拒絶したり押さえつけたりはせず、もっと優しい制御の方法を教えてくれた。
あれから十年たって、今では葉も感情を爆発させたり能力を暴走させたりはしない。
それでも飴をなめるのが好きなのは、きっと、思い出すからだ。
口いっぱいに広がる甘いキャンディと、抱きしめる兵部の暖かな腕。
記憶に結びついた泣きたくなるほどの幸せは、いつも暖かい声と甘い香りと共にあった。
キャンディ・ハート
甘くて壊れやすいきみ
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音波暴走すると葉耳が痛くなるんじゃないかな→耳が痛い時は飴をなめるとよいよ!\(^o^)/
そんな過程をを妄想しました。
あと飴好きな葉は相当口寂しいというかキス魔予備軍だと思います^q^
お気に召したらぽちっといただけたら嬉しいですv