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続きっていうかオマケというか蛇足というか、短めで、そしてわりと想定の範囲内なベタな展開です/(^o^)\
兵葉です。
次はネコ幹部シリーズ続き(真木兵)もってきます。
兵部がサイコキネシスで人間(と言っていいかわからない、種族の優越性など獣以下の本能しか持たない下等生物だ)を破壊すると、人間(と以下略)だったものは醜い血しぶきをあげてただの物体になりさがり、床にくずれ落ちた。
まだ生暖かい肉の塊が、一つ、二つ、三つ。四つ。
四つめは、たった今まで葉の体を乱暴に組み敷いていた男の死体で、死ぬ時ですら葉の上に重なり薄汚い肌で蹂躙しようとしていたから、兵部は舌打ちすると見えない力でコンクリートの床へと死体をはじき飛ばした。
ただ、返り血がかかるのだけは防ぎきれなかった。びしゃりと滑る赤い血が葉の頬を濡したが、葉は相変わらず死んだように半分閉じた虚ろな瞳を虚空に向けているだけだった。
兵部がそこにいた全ての人間を、葉以外の全ての人間を殺したあとも、葉は何の反応も示さなかった。気付いていないのか、とっくに意識を煩わしい現実から切り離し逃避してしまったのかはわからない。
ふーっ、ふーっ、とガムテープ越しに微かに聞こえる苦し気な息づかいと荒く上下する胸の鼓動だけが彼がマネキンではなく生きている人間だと教えてくれていた。焦点のあわない濁った瞳は確かに兵部を映しているのに、何の反応も示さない。
折り重なる死体の中からそっと抱き起こし、口を塞ぐガムテープを剥がすと、柔らかい頬が引き攣れ、しゃくるような呻き声が聞こえた。
ひび割れて血を流す薄い唇を舐めとると、ようやくゆっくりと睫毛が揺れた。ぼんやりとした瞳が兵部を視界にとらえると、驚きで見る間に目が見開かれる。兵部は、葉が気付いたことに安堵して、笑おうとしたがうまく出来なかった。
「ずいぶん酷い有様だな」
「くっ、ハッ……こんなの…、なんでも、な…ン…」
葉はガクガクと首を振る。肯定でも否定でもなく、何かに耐えるように体を震わせる。震える体を懸命に抑え込んでいるようにも見えた。
額に汗を浮かせ目を見開いて、息をするのもやっとのように見えるのに、軽口を叩く葉に兵部は顔を曇らせる。兵部は上着を脱いで葉にかけると、肉の腐る匂いが充満する部屋を見渡し、死体の一つを冷めた目で見下ろしながら囁いた。
「ごめん、キミの手で殺したかったよね」
「とに、……余計なこと、すんなよ、ジジぃ……ッ!。あいつら、は……俺が、殺――」
兵部を見上げ微かに揺らした瞳は、霧が晴れるように透明さを帯びる。兵部が擦れて血の滲んだ頬に唇を寄せると、とうとう張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、葉は兵部の腕の中で抱きとめられたまま気を失った。兵部はビデオカメラがまだ回っているのに気付くと、そちらにちらりと視線を向けた。
それだけで、パキンと軽い音を立ててカメラは火花を散らして粉々になった。
「でも、おまえが殺したいと思うやつなら、僕が殺したっておかしくないんだよ」
今破壊した映像に、何が映っているかなんて想像するのも腹立たしかったが、気を失っている葉に触れている以上透視は容易だったし、そんなことをしなくてもこの疵だらけの体を見れば明らかだった。
――――
殴られれば誰だって痛いし、出来ることなら回避したい。
犯罪組織に身を置く以上、血なまぐさい危機に晒されれることはあり得ることだし、回避出来ないのは実力不足の自業自得だ。殺されたって文句は言えない。
つまりこれは、報復と暴力のバリエーションの一部であって、犬に噛まれたようなものだ。
普通人至上主義者の理不尽な差別に憤ることはあっても必要以上に傷つくことではない、と葉は自分に言い聞かせていた。
「ッい、痛――ッ、」
「こら動くなよ」
「痛い、染みるからこれ!もっと優しくしてってば!」
部屋に連れ帰ってバスルームにいれて超能力で手当てをする間も、不自然なほど穏やかな「いつもどおり」の軽口の応酬が続く。傷だらけの肌に手を伸ばすと時折、本人の意思に反する生理的な不随意運動のようにびくりと硬直する他は本当に普段と変わらない。兵部も、そんな違和感には出来るだけ気付かない振りをした。
「骨折直してやっただけでも感謝しろよ?」
「じゃあこっちの擦り傷のほうもなんとかしてよ。お湯が染みて痛いんすけど」
「無理言うなよ、僕は医者じゃないし。ほら、ただの紙で指切るような怪我のほうが治療は難しいって言うだろ?」
兵部が水圧をあげたシャワーを正面からかけると葉は水をいやがる犬のようにぷるぷると頭を振った。
「つか、いつまで少佐もココにいるんだよ。怪我ももう平気だから出てけって」
「いいじゃん。知らない仲ってわけじゃないだろ?昔は良く一緒に風呂入ったんだしさ」
兵部は学ランを着たままで、裾はまくってあったが、あまり意味はなく葉と同じくらいぐっしょり濡れている。泡だらけのスポンジとタオルと石鹸をサイコキネシスで浮かせてほいほいっと葉に投げた。
「でも……!」
赤黒い痣だらけの体はあまり見られたいものではない。しかし力尽くで追い返そうにも当然かなわないはずで、葉はふいっと視線を外した。
「僕にも心配させてよ。いつまでもキミは僕の子供なんだから」
兵部は目を細めたが、葉の機嫌がますます悪くなるだけだった。
「別に……こんなの犬に噛まれたようなものだし。たいしたことねーよ」
「ふぅん、ほんとにたいしたことないんだ?」
兵部はすっと切れ長の瞳の色を濃くし、一歩葉に近づく。
床に座ってバスルームの壁にもたれている葉の両側に自分も屈んで腕をついて、追い詰めるように距離をつめる。唇が触れそうなほど、透明な瞳に映り返す自分の意地悪い顔さえ覗ける程、近く。
「……ッ!」
距離をつめれ、葉は微かに身じろいだ。無意識の恐怖を抑え込もうとしているのか、手の平に爪の跡がつくほど硬く手を握りしめ息を呑む。見開いた目の端に映るのはおそらく今目の前にいる兵部ではないのだろう。兵部が額をぶつけるとさらに顔を近づけると、葉はとうとう目をつむって顔を背けた。
そして、
「こら」
「っ……んっ!」
兵部は、顎を浮かせると、葉の形の良い鼻の先をカリっと囓った。
「やっぱりたいしたことあるじゃん。僕に隠し事は無しだぜ?」
兵部はわざと呆れたように見下ろした。指が折れそうなほど握りこんだ葉の拳をゆっくりと解いて一本一本、冷たくなった指の先を唇に含んだ。ぱたぱたと水しぶきが落ちる髪の先にも、キス。
呆然と、兵部の行動を他人事のように見ていた葉は、はっと我に返ると頬を赤く染めた。
「な、何してるんだよエロじじい!」
「んー?嘘つきな悪い子にお仕置き」
歌うようにさえずり、鎖骨や腕や首、体のあちこちに唇を落とす兵部に、葉はあるいは馬鹿らしいと思ったのか壁に預けた肩の力をぬいた。
「はぁー。はいはい、どうせ俺が悪いですよ。すみませんねー出来の悪い部下で。パンドラの幹部があっさりとっつかまるなんて、情けなさすぎて誰にも言えないよな」
「何言ってるんだよ」
兵部は大きな目をぱちぱちと瞬かせて葉を見上げた。
「おまえは悪くないだろ?そりゃあちょっとは血の気が多いけど。それに幹部って言っても下っ端だし」
「なっ!ひでーって!そりゃねーだろ!」
「とにかくだな、無茶をするなって言ってるんだ。隠し事もなし。ほら、返事は?」
うんと小さい子供に言い含めるように(実際兵部よりもずっと年下なのだが)、簡潔な言葉でたしなめる兵部に、葉はうっと言葉をつまらせた。
「わかったよ。ごめん、きょーすけ」
「それから?」
まだあるだろ、と先を促し、濡れてぺったりとした癖毛にくしゃりと指を通す。
兵部を黙ってみつめる葉の零れそうなほど大きな瞳に、じわりと涙が滲む。
「……ッ!」
小柄な兵部を押したおすようにがばっと腕を広げてしがみつく葉に、兵部は逆に完全に抱き込まれる形になって目を瞬かせた。しかしその昏色の双眸が慈しむような色をにじませすぅっと細められる。
「ぁ、いつ、ら、怪物って…ッ」
――怪物よりノーマルの方が偉いって体に教えてやる。
耳の奥、体の奥に直接刻みつけられた声が忘れられない。
空気を震わせまるで「助けて」と叫ぶような悲鳴に、兵部はじっと耳を傾けた。
よく言ったね、と囁きながら。
――――
あ、続きません。おまけというか蛇足でした。
このあとは葉はたくさん少佐に可愛がられればいいよと思う。
例えばA×B前提での他者×Bが好きすぎるという変態ですみません/(^o^)\
そして、その後のA×B描写に萌えるという変態で(ry
マニアックにもほどがあるんだぜ。でも、好き。
この兵葉はわりとさばさばした関係だけども、肉体関係はあるよって前提でお願いします(おそい)。
次はネコ幹部シリーズ続きもってきます!
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