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葉祭り企画第2弾!
「ともすれば」のひよりさんとリレー小説です。
ひよりさんちのどえろい賢葉の続きを兵葉で書かせていただきました!
どちらも葉が大変に大変なことになってます。よかったらふたつあわせてご覧くださいv
「ひより様:パンドラリターンズから賢葉」
→「ふーた:続編で兵葉」
まずは↑をごらんになってからお読みいただければ幸いです。
hollow(続き)
「すぐお前のボスが助けに来るだろうし、そうしたら帰れるだろ?な?」
痺れたように動かない頭の隅の方で、誰かが何かを言っているのが聞こえてる。
いたわるように背を撫でる手からは、優しさよりも憐れみが伝わり、葉はますます惨めな気持ちになった。
うるせーよ、誰のせいだと思ってるんだ。自分で貶めた相手に同情して、挙げ句塩を送るなんて甘すぎて反吐が出る。もっとも、その最後まで爪が甘い相手に惨敗した自分が一番悔しい。やるなら最後まで徹底的にやれってんだ。これじゃあただ、惨めなだけ。絶対、ぶっ殺してやる。
思いつく限り口汚く罵っても、自分が絶対的な敗者だということは変わらないし、夢の中でいくら悪態をついても相手には届かない。葉はこれ以上ないほど最悪な夢の中で眼を醒ましたのだった。
「葉先輩…?」
気遣わしげに名を呼ぶ少女の澄んだ声に誘われるように瞬きをすると、そこは見慣れた自分の部屋だった。そろそろ掃除しなきゃなぁ2ヶ月溜めたジャ●プもいい加減ゴミに出して、と部屋の隅をぼんやり眺めていると、徐々に先ほどの夢が眩暈と、吐き気と、信じられなほどの怠さに変わり、がずしんと身体中を襲った。
「よかった、気付きました?先輩丸一日眠ってたんですよ?」
「んもう!心配したんだからぁ!ちょっと待って、今少佐呼んでくるわ」
パティがわずかに高揚して、そしてマッスルがやたら親しげに顔をのぞき込む理由が葉にはわかってしまったような気がして、起きて早々にげんなりと眉を顰めた。ただ、二人の純粋な安堵を邪推して受け取ってしまうのはあんな体験をした自分の心持ちのせいだ、と葉はすぐに思い直した。
無事に目覚めたから安堵しているのだろうという二人の気持ちが伝わったので、心配かけて悪かった、と平静を装って起き上がったのだった。
「ぃ……っ!」
「ど、どうしたんですか?!」
上半身を起こそうとして、ガクリと肘からシーツに落ちる。腰の奥から電流を流したような激痛が走り、内臓が痙攣する。両足も自分のものではないみたいに重い。疲労物質が膝から下に泥のようにたまって膿んでいるような気がした。
「いや、なんでもね、ぇっ」
「無理はダメです。まだ寝ててください。ね、そうしましょ?」
少女の白い華奢な手にやんわりと肩を押しと留められ、葉は枕に頭を戻した。
眼を瞑ると、賢木の顔が脳裏にちらつく。薄暗い洞窟の、饐えた精液とまじった埃の匂いをまざまざと思い出す。顔色を悪くして爪で血が流れるほど拳を握りしめた葉に、パティはよほど具合が悪いのかとおろおろするが、彼女を気遣って強がる余裕も今の葉にはなかった。顔色が悪いのも、震えるのも、恐怖や痛みのためじゃない。神経を焼き切るような屈辱の一部始終を思い出して葉は拳を握りしめた。
その後はマッスルが呼んできた兵部に自体のあらましを大方聞き、「無事でよかった」「おかげで僕は女王に嫌われたじゃんか」と兵部が現在一番心に掛けている〈女王〉明石薫の信頼を裏切ってまでまっさきに洞窟にかけつけてくれた兵部の愛情こもった言葉に多少なりとも報われた思いがした。
「あんまり心配かけるなよ?」
「……すんません」
兵部は様子がおかしい葉に首を傾げつつ、具体的に何かを聞くことはしなかった。彼は高レベルの精神感応者でもあったが、それゆえ仲間の本当に知られたくないプライバシーは誰よりも重んじる。パティもマッスルも「性的な意味で手懐けた」という発言には口を噤み、結局、「遭難者を救出しにいったらパンドラの幹部がバベルの特務エスパーの膝枕で眠っていた」というおよそ珍妙な一大事件はそれ以上触れられることなく一週間が経ったのだった。
――
楽しければ一番、今が一番、未来なんてどうだっていい。
パンドラがこの形のまま変わらないでいつまでも続けばいい、とのらりくらり「適当」を維持する葉は表だっては何も変化がないように思えた。与えられた仕事を余裕でこなし、子供達と全力で遊んで兵部の軽口の相手になり、真木をいつものようにからかって。幹部の一人だというのに誰よりも陽気な葉はいつも以上にいつもらしく、葉自身も昼間は鬱屈も苛立ちも焦燥も、何も感じないでいられたのだった。
だが、それも夜自室に戻って一人きりになるまでのこと。
葉は自分の部屋にすべりこむと、電気もつけずにドアを後ろ手に閉めて扉に凭れた。月もない夜。廊下の暖色の蛍光灯が漏れる隙間が閉じると、完全な闇が静かな部屋に訪れる。
闇に眼が慣れると、どこからか漏れる光が部屋を白っぽく染めていく。埃が舞うのが見える。耳の奥で静けさによる高音が反響し、いやでもあの洞窟のことを思い出させた。昼間はまだいい。皆といれば平気だ。だが、静かになると、一人になると、どうしたってあの抑えきれない怒りを思い出す。
サイアク、さいあく、超最悪。
同性に指を突っこまれてイかされるなんて。それも一度じゃない、二度、三度。
賢木は医者だし、どこをどうすればどういう効果があがるかを熟知しての行為だから、葉が屈辱しか感じないはずの行為で快楽を得て達したことは賢木の目論み通りであり、人間の生理に適っていることである。しかしだからといって屈辱が薄れるわけではない。たかが指一本で思い通りに操られ、情けない姿をさらけ出したという敗北感がいや増しに募るばかりだった。
「ぅあー……ちくしょ……」
ごし、と紅くなった頬を擦り、ついでに瞼を擦って、頭を振る。何をしていても、あのどうしようもない絶望が視界の隅にちらつく。無防備にケモノのように喘がされた自分のみっともない声が木霊のように背中を追ってくる。逃げられない、逃げ場がない。
「俺……どうしちまったんだ…」
全てを思い出す前に、思い出すことを拒否した脳が焼き切れるように熱くなる。
足元の床が突如ゼリーになってしまったみたいにぐにゃりと柔らかくなり、葉は咄嗟に壁に手をつくと、そのままずると壁にもたれるようにしてうずくまった。
――ガン、ガン、ガン
首の裏が熱くなり、背筋が冷えるようなみじめさを振り払うように、壁に二三度頭を打ち付けた。鈍い痛みが走るその一瞬だけ、身悶えするような羞恥が薄らぐ。
うう、と葉は低く唸って頭をかきむしったが、それでも残像は消えてくれなかった。何をしていても、忘れさせてくれることはない。思い出しただけで死にたくなる屈辱が身体中を駆け巡り、熱く燃えた針金のように葉の心をつきさした。
悔しい、くやしい。悔しい。
「欲情はしない」と言い切ってモノか実験体のように扱いたかだか指一本で人のアイデンティティを根底からひっくり返すように犯されたのに、最後あんなふうに触れられたことで僅かに安堵して縋ってしまった自分が一番悔しい。
(確かにアンタの言うとおりだったよ)
男としてのプライドがどうこう、という以前に人間としてのプライドを根本から剥がされた気分だった。剥き出しに心の一番柔らかい部分が剥き出しにされ、直接爪を立てひっかかれるような。
「ひ、ぁ……」
葉は自分の腕をぎゅっと抱えるように一層小さく縮こまると、ふるりと身震いした。
ドクン、と心臓が跳ね上がる。背筋を這いじくじくと染み渡る熱に困惑しバランスを失う。横伏に倒れ込んだ頬が掃除が行き届いていない埃臭い絨毯に押しつけら、れちくちくと不愉快で不潔な感触が伝わったが今はそれ以上に厄介がものがあった。
(いやだ……もう……)
実のところ、葉をここ三日間悩ませていたのは思い出すだけで死にたくなるような精神的屈辱そのものではなく、ふとした時に思い出されるあの身体中を突き抜けるような異常な快楽の名残だった。
腹の奥、腰の内側、生殖器の裏側、言葉ではうまく掴めない実体のないような奥底から、あの熱が身体中を蝕み表面まで這い出てくる。賢木のことは殺してやりたい、と現状思ってはいるが、もしも再び本人を目の前にしたら自分はどうなってしまうのだろう。
震える手で四肢をやっとのこと支えてみっともなく這い蹲るのだろうか。
またあの時のようにいやだやめてと惨めに赦しを請うてしまうのだろうか。
考えるだけで恐ろしく、背筋を足元から寒気が走った。
足元から瞬く間に葉の体を駆け巡る恐ろしい寒気は、うずくまり丸まった背骨の辺りで熱を含み、頭の天辺まで到達した時にはあの時いやというほど刻み込まれた恍惚の震えに変わっていた。
「くっ……んっ」
自分の意思に反して体が疼くのも、熱が一点に集まりだすのもあの時と同じだ。唯一違うのは、ここにいるのは自分一人だということだけ。体のラインに沿ったきつめのジーンズの布を押し上げ形を取り始めた陰茎に思わず手が伸び、葉は頭を振った。
(何してるんだ……)
僅かに残る冷めた理性が耳奥で囁くが、この際散々陵辱されたプライドなど、完全に捨て去ることが出来たら、まだマシなのかもしれなかった。葉はまだ自尊心を手放すことが出来ず、ベルトを外しかけた手を体の横についてよろよろと起き上がった。驚く程腕に力がはいらない。いよいよ吐き気が酷くなり、葉はふらつく足でベッドに倒れ込んだ。
「い、ってぇ……」
しかしベッドに倒れ様、足の小指をベッドの支柱にぶつけてしまった。情けない上に下手な怪我よりもタチの悪い鋭い痛みに葉は乾いた笑いを溢して両手で顔を覆う。
(ハハ、おれ超ダッセーの……)
もはや溜息しか出ないが、末端の痛みに意識を取られたことで、あれほど苛んでいた腰の奥の疼きが治まりかけていた。今夜はこのまま寝てしまうのがいいかもしれない、と布団をかぶって寝返りを打つ。
しかし安堵も束の間、微睡みかけた意識にまたざわりと熱い手の平で膝の裏を撫でられるような寒気が広がり葉は再び全身が高揚する。
(……畜生……あのヤブ医者、絶対ぶっ殺す!)
胸の奥で悪態をつくが、今度こそ誤魔化しようのない明確な快楽が広がった。恐らくベッドに入ったことで緊張を安堵が上回ったからだろう。ここは葉一人しかいない彼自身の寝室の寝床で、さすがにこの部屋に異性を連れ込むということはなかったが、グラビア雑誌などにお世話になったりすることもある。ここで自分を慰めるとしても、不自然なことは何もない。その無意識の安堵が再びざわつく感覚を刺激したのだった。
しかもさらに悪いことに、今葉を苦しめているのは男としての快楽を得るための器官ではなく、賢木に散々弄られ開発された本来ならセックスには使用しない部位だった。
「ぁ…、はっハッ…」
こめかみがジンジン鳴る。目が涙で潤んでぼやけて見えない。誰も聞く人がいないという安堵からか、繰り返し浅い呼吸が零れる。ベルトのバックルが外れきらずカチャカチャと鳴る音が羞恥を煽る。下履きを半分まで脱ぎ落とすと葉はあの時のように、自然にそこに手を這わせていた。しばらく握った手を上下に動かすだけのゆるやかな刺激が続く。しかし脳に響く僅かな快感を辿るように目を瞑った葉がすくいあげたのは、「これじゃない」という得体のしれない焦燥のみだった。
恐る恐る手を片手を背中にやり、腰から滑らすようにして遠慮がちに普段は決してふれることのない窄まりに指
を這わせる。瞬間、痺れが指先から体の芯を貫いた。
「ぁ、ァ……っんッく」
思わず悲鳴が口から迸り、葉は反射的に枕に顔を埋めたのだった。
柔らかい枕カバーを歯で噛んで必死に声を殺す。ざらつく穴の縁を指先でゆるゆるなぞると、あの時の衝撃が再び蘇って来る。忌まわしい快楽を無理矢理引き出され、戦意を失わせるためだけに、男としてのプライドを根こそぎ剥ぎ取ることのみを目的とした行為に。怒りに瞼の裏が熱くなるが、それ以上にあの味わったことのない強烈な快感も一緒くたになって葉を襲った。
「んっ、んっ」
声を押し殺すために噛んだ枕カバーが唾液で濡れて濃く色が変わっていく。葉は体を横たえたままぼおっと焦点の定まらない虚ろな瞳を虚空に向けてゆるりと焦らすような快楽を探っていた。まだ、指を直接中に埋めることに抵抗があった。縁をなぞってみても入り口は狭く、指一本だって入りそうにない。
葉は少し考えてから意識を部屋の反対にむけ、サイコキネシスで棚から愛用のヘアワックスを引き寄せた。小さなアルミの缶は、まるでボールを投げる映像をスローモーションで逆再生したみたいに放物線を描いて葉の手の中に収まった。カポっと軽い音がして蓋が外れる。葉は半透明のジェルを指で掬うと、再び体の後ろに手を持って行った。
躊躇は一瞬。
それ以上に未だ全く衰えない誘惑にこれ以上耐えることは出来なかった。
「ぃぁ、……くっ…ンンンッ」
ずっと待ち望んでいた快楽に、葉の腰が跳ねた。一際甲高い声を噛んで、また低く途切れ途切れに呻く。だが今度は本当に止まることが出来なかった。後ろの孔を弄りながら前に指を絡ませる。止まろうと思っても止まらない。
奥の深いところを指が掠める瞬間、脳裏に賢木の顔がちらつく。背後からされていたあの時は、砂まみれの洞穴の岩肌が眼前に広がっていただけだというのに、顔をこんなに鮮明に思い出すとはどういうことだろうと、まだかろうじて冷静さが残っている頭のどこかで不思議に思う。
でも。
「ひぁ……あ、ああっ。やだ…こんな…」
あれほど嫌悪していたのに、あれほど辛くて苦しかったのに、同じ行為を自ら求め一人でこうして浅ましい自身を慰めていつことに耐えられなかった。しかしもっと耐えられないのはいくら指を這わせても衰えるどころかますます高まっていく痛痒感にも似たむず痒い快楽だった。
カバーがしとどに濡れ、背後に回した指を求め次第に腰があがっていく。
最初は横伏していたはずなのにが、葉はいつの間にかあの時の体勢をなぞるように四つ這いになっていた。しかしあの時と違ってうまくはいかなかった。片手を前についても、もう片手は後穴を自らかきまわしているので、肩で体を支えるしかなかったが、硬い地面と違って柔らかいスプリングの効いたシーツに膝が沈んでしまう。
シーツを噛んでは苦しそうに息をする様子は溺れてもがく人魚のようだった。
「…ぅ…やだ、…もっと…」
甘んじて屈辱的な体勢に耐え、それでも思い切り熱を発散出来て全てを終わらせられるならまだよかったのだが、そんな諦めに似た妥協さえも思い通りにはならなかった。どんなに求めても、自分で自分の後ろの孔に指を埋めるのは身体的に限度があるのだ。葉は指の届かない奥深くを求めて腰をくねらせる。
眼に涙を浮かべて喉を震わせ背中を仰け反らせ、どんなに快楽を追い求めても、虚しい一人遊びは終わらない。指を最初に埋めてかき回して味わった痺れそうな快楽も、今やなんの慰めにもならず、それどころか手応えのない中途半端な焦燥になって葉の体をますます責め苛んだ。
「ぁぁ、ん、くっ…」
汗が体を伝い、枕に埋めた吐息が蒸気になって頬を濡らす。涙が溢れて髪がぺっとりと頬に張り付く。
こんなに苦しいのに、こんなに気持ち良いのに、まだ終われない。恐らく永遠に、終わらない。
「誰か……助けて……」
プライドも何もかなぐり捨ててしゃくりあげる吐息と共に囁いた時だった。
空間が歪むノイズが葉の耳元に響く。そして、人の声。
「呼んだ?」
場違いなほどさわやかな笑みを浮かべてふわりと床に着地したのは兵部京介だった。
「……な、なな、なんで少佐がここに?!」
葉は一瞬、あまりの驚きに全ての身体感覚を切り離したような上擦った声で叫んだ。半ばパニックに陥り兵部から姿を隠すように毛布をひき被るが、つかつかとベッドの横に歩み寄った兵部によって剥ぎ取られてしまう。
「……君が助けを呼ぶ声が聞こえたからね」
「やだ……み、見るな……っ!」
「あーあ、それにしても酷い」
遠慮なく毛布を剥ぎ取った兵部の前に余すところなく晒された裸体は、汗と半透明な粘液に覆われ、どこもかしこものぼせたようにピンクに色づき、快楽を耐えるように震えていた。兵部はくすりと笑いを溢すとベッドの縁、横たわる葉の隣に腰掛けて汗と体液が混じった液体が伝う脇腹を手の平で撫でた。
「なんで……少佐、どうして……」
当然、葉にはワケがさっぱりわからない。兵部がここにテレポートで現れたことも、葉のしていたことを追求するでもなくただ微笑んで座って居ることも判らないことだらけだった。
しかし兵部がごく自然に手の平で愛撫を送るから混乱は徐々に消えさり、自分の手ではない、他者に与えられる快楽に素直に身を委ねて喘いだ。
「ぁっ、んっ、ふ、ぁ」
「言っただろ?きみが苦しんでいるのが聞こえたから。あ、言っとくけどテレパシーじゃないぜ?それだったらこんなヤらしいおまえの痴態、パンドラ中の精神感応者に伝わっちゃってるからな」
冗談とも本気もつかない言葉で笑う兵部は、言葉から伝わる以上に葉のことを心に掛け愛おしんでいるようにみえたのだった。興奮するケモノを宥めるように脇腹から下腹部を撫で、熱の中心に白い指を絡ませはじめた兵部の黒い学生服の袖に葉は力なくすがりついた。
「やだ…っ、ぁ…やだ、少佐、やだ…」
「何がいやなんだ?こんなにして。一人じゃ辛かったんだろ?」
「ぁ…あ、違う、少佐……こんな…」
葉はますます消え入りそうな声で囁いた。兵部のことは、組織のボスと部下という枠には収まりきらない絆で繋がっているし一方ならない思いで慕っているが、到底こんな姿を曝すような間柄ではない。羞恥というにはあまりに強烈な困惑と、それ以上にまるで愛されていると錯覚しそうな優しい指の動きにどうしようもなく喘いでしまう。
「少佐…変…、変だと思わない……のかよ?こんな、ぁ、あ」
「思わないよ。一応状況はわかってるつもりだしね」
「なに…ど…いう…こ、と…あ……」
しかし普段の葉からは想像つかない舌足らずな甘いうわごとに兵部はますますおかしそうに眼を細める。と見えない力で葉の体を俯せにひっくり返した。腕にひっかかるシャツ越しに背を撫でる。
「一応あの場では、だいたいのことはわかったからプライバシーを尊重して深いところまでは透視なかったけど…これは酷いなぁ…。やっぱ殺しとくべきだったかなあのセンセ」
ここまでとは思わなかった、と兵部は葉の背に手をあてたまま苦い顔して透視を続ける。
「ごめんね、葉。もう大丈夫だよ。よく頑張ったな」
「ぁ……ぅ……」
葉の指先が兵部の服を握ったまま震えているのは、透視されている羞恥と、痴態を見せても拒絶されなかったという安堵と、抑えきれなくなった熱の処理を持て余しているためだった。
「ぁ……おねがい……っ、少佐……」
「うん。もう平気だからね」
兵部はベッドの縁に腰掛けたまま、背中から腰へと、腰から丸みを帯びた尻へ、そこからさらに奥の狭間まで、楽器を演奏するように指を滑らせて奥に到達する。すでにヘアワックスのジェルでぐちょぐちょになっていたそこをそれ以上慣らす必要はなかった。指二本をいきなりつきいれても、鈍くなった粘膜に痛みはほとんど伝わらず、逆に焦らされますます鋭敏になる神経が突き抜ける快楽のみを拾う。
「ひぁぁ……ぁっ、イイ、ぁあっ…」
「ほら、もっと腰をあげてごらんよ」
兵部はシーツと自分の腕にへばりつく葉腕をとり前に伸ばさせ、楽な体勢を教えた。俯せになった腹の下に腕をさしいれ、まるで猫や犬を抱き上げるように腹を浮かせて腰を上げさせた。
ぜいぜいと肩を揺らし荒い息をつく葉は、くったりと手足を伸ばしてすでに兵部の言うままに従う。
身体中で快感を追う貪欲な仕草に兵部は笑いかけるが、兵部もまた充分に欲情しているのは掠れた笑い声に含まれた熱のようなものからも明かだった。
「そんなにいいの?僕は指を動かしてないのにね、自分から腰ふって」
「ちが……っぁ、ああっ、イ、も、っとぉ」
「はいはい。ひくひくして指をしめつけて、イヤラシイね。葉をこんなふうに変えた賢木センセイが正直少し憎いなぁ」
一度入り口まで引き抜いた指を一気に最奥まで押し込む。
粘液の壁を指の腹がばらばらにこすり、自慰では決して得られない強い快感に葉の膝が崩れそうになる。
が、ガクリと力の抜けた腰がシーツに落ちる寸前に兵部が葉の中で指を曲げて葉の腰を跳ねさせた。
「面白いね、スイッチを握ったみたいだよ」
指の動き一つで思うように操れる、繊細さを示す葉の感度に兵部は愉しげに笑う。くったりとシーツに沈んだ葉を再び抱き起こし、後ろに指を埋めたまま、片手で背後から抱きすくめるようにして熱がくすぶる茎に指を絡ませる。
「こっちも出しちゃえ」
兵部は葉の耳たぶを唇で噛み、耳の奥へと悪戯めいた囁きを流し込む。
鼓膜をくすぐる甘い声に、葉が喉を仰け反らせてドクドクと白い粘液を放出した。最後の一滴まで絞り出すように、兵部が輪のようにした指で上下に扱いた。
「随分出したね、溜まってたんだ?ええと、あれから一週間だっけ」
はたはたと雪のように絡ませた指に降り積もる粘つく液体に兵部は眼を細める。手を開くと、指と指の間にとろりとした白濁が糸を引いてシーツに落ちた。兵部は手首まで伝う白濁を舌で綺麗に舐めとると、葉の頭を抱き寄せ「満足した?」と囁いた。ほとんど、意味のある言葉を発せず喘ぐだけだった葉がようやく荒い呼吸から回復してコクリと頷く。頷いたのに、
「まだ…少佐…も、っとぉ」
「わ、葉?!」
完全に理性をなくしたように兵部に甘えすがる。腕を回し、逃がさない、というように体全体でしがみつく。タックルするように体重をかけると乱暴に兵部を枕の上に押し倒した。驚き、呆然と見上げる兵部を葉は熱と涙でとろりととかされた瞳で見下ろす。
「……、まだ、帰らないで……ここにいて」
葉はほとんど泣き出しそうに囁くと、兵部の足の上に四つ這いになり震える手でベルトを外し前をくつろげさせちろりと紅い舌を差しだした。
顔を埋め、舐めて吸って挟んで、唇の摩擦でぴちゃぴちゃと水音が響く。そうやってずっと舐めていると汗で塩
辛くなった体液の味がまったくしなくなる。兵部の甘い香りが鼻腔をついた。
自分から、同性の牡を求めてこんなことをするなんて思わなかった。
でも、欲しいと思ってしまったんだからしょうがない。
葉は諦めて眼を伏せると愛おしげに硬い肉の塊に頬を寄せた。
「はっ…そんなにしなくてもいいよ?こんなに気持ちよさそうな葉を見てたら僕も興奮してきちゃったから」
兵部のその言葉に嘘がないことは、葉の口の中で大きく育った熱が物語っていた。もう大きさ的にも挿入を助ける湿り気にも充分なはずなのに、熱心に舌を這わせる葉の目はとろんと溶けていて、半分伏せた瞼を兵部は愛おしげに撫でた。
「んっ、んっ」
瞼から頬に、そして粘液を舐めとって白く震える喉へと兵部が指を滑らせると、葉は気持ちよさそうに眼を瞑って兵部の手に甘えるように頬を擦り寄せる。色事の最中だというのにむしろ無邪気といっていいくらいの甘え方に、兵部は思わず「いいこいいこ」と囁くと、柔らかい癖毛にくしゃりと指を絡ませた。
葉は仰向けになっている兵部の学生服のシャツのボタンを一つ一つ乱暴に外すと、下履きは全部取り去って、自分は兵部の腰の上に跨った。兵部の白い腹の上に左手をつき自分の体を支え、右手は兵部の熱を支えるようにしてゆっくりと腰を下ろした。窄まりに熱の先端があたると、葉は眼をぎゅっと瞑って兵部を戸惑わせた。見上げる兵部には、膝立ちになって突っ張った葉の太腿が緊張に強張って震えているのがよく見えていた。
「無理するなよ、賢木くんには指でしかされてないんだろ?」
見上げて、揶揄するように囁く兵部の台詞に、葉は眼を大きく見開いた。
「今アイツのこと、言うなっ…て……ぅ、あ」
「ごめん、」
兵部は葉の膝を引き寄せて苦笑した。
「これじゃあ気にしているのは僕のほうみたいだ」
「しょ……さ?」
「僕も人並みに嫉妬している、ってこと」
兵部は今まで見せたことのない類の微笑を浮かべると葉の腰を支えなおして挿入を助ける。
「ゆっくり腰落としてごらん」
「こぅ……ぁ、ひっ……」
「そう。動ける?」
「平気……っ!」
葉は手を兵部の腹の上についたまま、ぴんと背を伸ばして喉を仰け反らせて弾かれるように甲高い叫び声をあげた。膝の震えが収まったころ、ゆっくりと上下に動き出す。
「気持ち良いかい?」
「ん、あっ、…やだ、ぁっ」
もはや声を抑えようとする努力もせず淫らがましく泣いてしまうのは、待ち望んだ熱い質量に体を貫かれ葉の理性が壊れかけているのと、触れる兵部の指先からは慈しむような好意しか伝わらないためだろう。率直に寄せられる愛情には弱い葉が無防備に心を委ねてしまうのは仕方なかった。
兵部は揺さぶるたびに体の前で跳ねてとろとろと半透明の液体を溢す牡を指に絡ませると、下からつきあげる腰の動きに合わせて揺すった。熱く濡れていて、兵部の手の平にじわりと熱が移る。兵部はそこから透視した違和感のようなざわめきに首を傾げて動きを止める。
「やだ…やめないで、やだ…ぁ」
駄々をこねる子供のように首をふる葉は、すでに何にたいして「嫌」と言っているのか定かでない。恐らく本人もわかっていないのだろう。ぼろぼろと涙を零して腰を揺する葉に兵部はごめんね、と囁いて宥めるように頬を撫でた。
「でも、葉が欲しかったのはこっちじゃないだろ?」
「ひ、ぁっ…」
兵部は不意打ちのように思い切り腰を下から突き上げ、葉の体に埋まる熱の存在を示して笑った。兵部は葉と繋がったまま器用に上半身を起こすと、葉と体面座位の形で向かい合う。兵部が体を起こしたことで二人の距離はぐんと近づき、兵部は葉の体をきつく抱きしめる。まとわりつく汗が交じるが不快感はない。
「あの時賢木センセイにも、こう…されたかったんだろ?」
暖かい腕に抱きしめられ耳元で囁かれる声に、葉は観念して眼を瞑った。
――
「うわー…ごめん、少佐にこんなことさせ、て……。俺マジで死にたいんすけど!」
「何言ってるんだよ。それに僕がしたくてしたことなんだぜ?ていうか終わった途端にそれってちょっとひどくない?!」
互いに精魂尽きるまで熱を出し尽くし、互いに汗まみれになって同じくぐしゃぐしゃであまり意味をなしてないシーツの上で横たわる。「あーつーいー」とだらしなく手足を伸ばし枕に頬を埋めて突っ伏す葉を兵部は横目で見遣った。これが、思わぬコトから一線を越えてしまったことへの葉なりの照れ隠しだと兵部はほぼ正確に認識してこっそりと微笑んだ。
「ん?少佐がしたいからしたって?」
葉は兵部の言葉じりを捕らえ、意味がわからない、といったふうに眼を瞬かせた。
てっきりどこかのヤブ医者が最後にしたキスと同じく「同情」でされたことだと思ったのだが。
「言っとくけど同情じゃないよ。さっきも言っただろ?嫉妬、だって」
「なんだよ、それ」
「ま、とにかくさ。一度後ろ開発されちゃうと普通のセックスじゃ満足出来ないってゆーし、これからはたまには僕が相手してあげるよ。よし、きーまり」
枕にアゴをのせケラケラと笑う兵部を胡散臭そうに見つつ、葉はわざとらしく溜息をつく。
「あれだけ苦しんでたのがバカみたいだ」、と頬杖をついた肩を落とした葉に、兵部はにっこり笑いかけると頬に唇を寄せた。
「……!」
唐突な、そして掠めて触れるだけなのにとても誘因力のあるキスに葉は肩をひくりとゆらして頬を染める。しばらく迷ったあと、「仕方ねーな」と呟いて同じように顔を傾けるのだった。
hollow
――――――
タイトルは、「空虚」「うつろ」「洞窟」「えぐる」って意味で。
賢木先生のせいで後ろで感じるようになっちゃった葉くんは少佐に誘い受けしたりなんだかんだ大切にされればいいと思います!(笑)
素敵なえろかっこいい殺伐賢葉の続きをかかせていただいてありがとうございました!>ひよりさん
せっかくの格好いい賢葉なのに私が続きを書くとぬるくなる!と反省しきりです。\(^o^)/
と、明日8/29(土)21:00~から「ともすれば」のひよりさん主催で葉萌え絵チャやります!
もしよかったら遊んでくださいv
お気に召したらぽちっといただけたら嬉しいですv
はじめまして!!!すみません、興奮しすぎて挨拶よりも先に叫んでしまった…!!!
わぁぁあいらっしゃいませよくぞ見つけてくださいました…!ゆっくりしてってね!(笑)
兵葉少なすぎて…サイトも全然なくて…つーかサーチにあるのはうちのとこだけとか…どんなマイナーカプだよ…ううううっていつも凹んでいますので…
でも兵葉いいですよね!!!!
葉くんは少佐大好きすぎて健気で萌えすぎです。リターンズは神や…
これの続々編は…いつかひより様が描いてくださる…かも?!(笑)お願いしてみますvvv
素敵なコメントありがとうございましたーvvvv