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今週の澪の「紅葉ねーさんの命令でさー」発言からの妄想。
幹部ねつ造子供時代ですが、おもに少佐と紅葉の話です。
アニメのあの絵から、拾われた当初は葉3才紅葉9才真木10才くらい?と勝手にねつ造しています。
一個下に拍手お返事更新しております…!いつもありがとうございます!
not a girl but a lady
お風呂にはいって歯磨きもして、寝る前には葉に絵本を読んであげることにしている。
今夜も、三人で寝てもじゅうぶんに広いベッドにうつぶせになって少佐に買ってもらった文字の少ない絵本を広げる。そうすると、風船のように浮かんで天井近くのランプで遊んでいた葉がふわふわとおりてきた。
「真木ちゃんも一緒に読む?」
「俺はいい」
あたしよりいくつか年上の幼なじみは、ふきげんそうに唸ると、壁のほうに背を向けてしまった。どうしたのかしらと思ったけど、葉が「はやく」とパジャマをひっぱるのであたしはさっそく本を開いた。
少佐が与えてくれたこの広いベッドは、なんとなく、並ぶ順番が決まっている。一番端が真木ちゃん。真ん中が一番ちっちゃい葉。次があたし。それに時々、少佐が一緒に寝てくれる。その時はだいたい甘えん坊の葉の隣。
「もう3人とも寝てる?」
だから寝室とリビングを繋ぐドアが開いてパジャマの少佐が入って来た時、今夜も一緒に寝てくれるのかなと思っていきおいよく振り返った。
「まだ起きてます。どうかしたんですか?」
一番早く反応したのは真木ちゃん。やっぱり真木ちゃんも少佐が来るのはとっても嬉しいみたい。いつもなら、夜は少佐が『お仕事』で忙しいから、なかなかこのマンションには戻ってきてくれないのだ。少佐もお風呂はいってきたばかりらしく、あたしたちと同じせっけんの匂いがした。
すたすたとスリッパの歩く音。
「紅葉、こっちにおいで」
なんだろう。首をかしげると、手招きする少佐がじっとこっちを見ているのと目があった。よくわからないけど、それでも呼ばれたのは嬉しかったから、あたしはすぐにテレポートで少佐の前に着地した。
「どうしたの?」
「前から言おうと思ってたんだけどさ、お風呂入ったらちゃんと髪は乾かさなきゃだめだよ」
言ってることがよくわからなくてもう一回首を捻った。今は夏だし、バスタオルをくるくる巻いてるだけで充分。
「雫がぽたぽた垂れてせっかく買った本も汚れちゃうだろ?」
「……ごめんなさい、少佐」
「いや、怒ってるわけじゃないんだけどね。でも君は女の子なんだし、ちゃんとしないともったいないよ」
少佐はあたしの濡れたままの髪を撫でて、抱き上げてくれた。と、思ったら、すぐに空間がゆれて、あたしは少佐に抱っこされたままリビングの向こうの洗面所に移動していた。
「乾かしてあげるからここ座って」
ドライヤーを持った少佐がイスを指さした。よりかかるところのないイスに、あたしは大人しく腰かけた。目の前の洗面台の鏡に、あたしと少佐が映ってる。きゅうに、はずかしくなった。
「いい…!自分で出来るからっ」
「自分で、って。いつもやらないだろ、紅葉は」
子供じゃないんだから。あたしは恥ずかしくてしょうがないのに、少佐は楽しそうに笑うだけ。ブァァアってうるさいドライヤーの音が広がる。
「……だって、めんどうなんだもの」
「だから僕がやってあげるよ」
「やだ、くすぐったい!」
少佐の手の平があたまをさわって、髪を撫でられるのはくすぐったかった。じたばた暴れて、イスから落ちそうになる。少佐が「大人しくしなさい」ってまじめくさって言う。少佐を困らせたいわけじゃないから、あたしは膝の上でぎゅっと手をにぎってうつむいた。暖かい風と少佐の指が気持ちいい。
でもなんだか、胸がざわざわした。
「もう、いいってば!やめてよ、髪もぼさぼさだっていいの!今までそれで困らなかったし、生きていくのに必要ないもの」
それは本当。少佐にあたしたち3人、拾われるまで、ずっと泥とほこりだらけの世界で生きてきたんだから。光のささない、どぶのような世界で。
「僕は、髪のさらさらな子が好きだなぁ」
少佐は、あたしが暴れても何も気にしたことのないようすで相変わらずあたしの髪をいじってる。いつのまにかドライヤーは超能力で浮いていて、少佐の手にはブラシが握られている。
「こうやって毎晩ブラッシングするといいよ。せっかく綺麗な髪なんだから」
相変わらず少佐は人の話を聞いてない。あたしももう反論する気も起きなくて、また手を膝の上でにぎった。それからしばらくはドライヤーの音だけがした。撫でられる手の気持ちよさに眠くなってきたころ、うるさい風の音にまじって少佐が笑った。
「紅葉は大人になったら、きっととびっきりの美人になるね」
見上げると、鏡の中でにっこり笑う少佐と目があった。また、恥ずかしくなる。
「しらないもん、そんなの」
「ははっ。紅葉にはまだわからないかな?真木も葉も、イイ男になるだろうな。未来が楽しみだよ。ほら、2人とも隠れてないで出てきてごらん?」
少佐の声につられて振り返ると、いつからそこにいたのか、廊下のドアの影からじーっとこっちを見ている真木ちゃんと葉と目があった。
「何してるんですか?少佐」
「じゃあ真木も乾かしてあげようか。そこで待っててくれるかい?」
「俺はいいです!」
「きょーすけ、して?」
「いいよ、葉。じゃあ紅葉のあとだね」
真木ちゃんはぐずる葉を抱き上げて、どこにあったのか似たようなイスを見つけてきて座った。真木ちゃんは少佐をじーっと見上げていて、葉が真木ちゃんの長い髪をいたずら半分にぷちぷちぬいてるのに気付いていない。あたしからは、鏡ごしにそれが見えてしまった。思わず笑うと少佐も気付いていたのか、「まああの子は炭素の能力もあるしそんなすぐにははげないよ」とこっそりあたしにだけ聞こえるように耳打ちしたのだった。
「はい、できたよ」
少佐の白い優しい指が髪をすく。ありがと、とイスから立ち上がった拍子に、かがんだ少佐におでこにちゅっとキスされた。
――――――
「はい、できたわ」
最後にドライヤーの温度を冷風に切り替えて首元にあてて熱を逃がす。さらさらの金髪が室内灯を弾いていた。
「……ありがとう、紅葉ねーさん」
澪が、やけに素直に鏡越しに私に言う。素直というよりも驚いているようだった。くるくると髪先を指に巻き付けてはいじっている。
「うわー、こんなになるんだー」
「そうよ。毎晩ブラッシングするといいわ」
「やだぁ。めんどくさいよ」
「あら、こっちの方が少佐は喜ぶわよ?」
そういうと、澪はのぼせたポットみたいに耳まで真っ赤になる。
まったく、可愛いんだから。わかりやすいというかなんというか。
いつか少佐がしてくれたように、思わずおでこにキスをすると、澪は空気の足りない金魚のようにぱくぱくと口を動かした。
「な、な、な、なにすんのよー!」
「べっつにー。明日からは自分でちゃんとするのよ、おやすみー」
ひらりと手をふって、私はさっさと一人でテレポートで自室に戻ってベッドに入る。
今夜は、良い夢が見れそうだと思った。
少佐と真木ちゃんと葉とあたし。
四人で過ごした幼い頃を思い出す夜は、いつも、いつだってそうだったのだから。
not a girl but a lady
――――
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