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8月8日は葉っぱの日!タイトルは葉っぱが四枚で四つ葉のクローバー、みたいな感じです。
相変わらず山もオチもない感じでだらっといきます。
ちっちゃな葉が書きたいだけという\(^o^)/
拾われてしばらくたった葉くんと真木さんです
クローバー 2まいめ
気付くと、リビングの座布団で昼寝をしていたはずの末っ子の姿が見あたらなかった。
3枚並べた座布団は空っぽで、真木が手を触れるとまだほんの少しだけぬくもりがあった。
兵部が仕事やらバベルとの追いかけっこをやってる間、年少の2人の面倒を見て、家を切り盛りするのは自然と真木の役目になっていた。
面倒を見るのもつい放っておけない性分なのも、兵部に拾われる前からそうなのでそれは別に構わないのだが、バランスを考えた食事を作ったり、兵部が帰ってくるリビングを塵ひとつなく綺麗に調えて迎えたり、清潔な衣服にアイロンを当てたりといったことは兵部に拾われるまでの人生の中ではいらない仕事だったのだ。幼い真木が戸惑うのも無理はなかった。
これから干すたくさんの洗濯物を抱えながら、どこに行ったのだろうと考えているとベランダに出る途中で何かにつまづいた。
「わ……!」
たくさんのタオルやら服のせいで前が見えなかったのだ。
踏みそうになったのは、ふにふにとした手足を投げだして昼寝の真っ最中の葉だった。
「こんなところで寝るなよ」
両手が塞がっている真木は、つま先で葉の腰辺りをつついたがよく眠っている子供は起きる気配がない。
干したばかりの、太陽の光をすって焼きたてのパンのように膨らんだ布団に埋もれるように気持ちよさそうに眠っている。
今日は二日ぶりに兵部が帰ってくるから、せっかく布団を干したばかりだと言うのに、葉はすぴすぴと気持ちよさそうに涎を垂らしていた。
「あー、また洗わなきゃ」
真木は高く澄み切った秋晴れを見上げた。薄い綿菓子のような雲が、高いところを霧のように漂っている。
カーテンがそよぐ少しだけ開け放した窓の側で体を丸めるようすは、ひだまりを求める猫のようだと真木は思った。
たたき起こすのも忍びなく、そのまま放って洗濯物を干していると、葉が眼を醒ました。
「あれ-?まぎさんー…おれも、てつだうー」
葉はふぁ、とあくびをして眼を擦る。
「いいよ。おまえが手伝うとよけいかかる」
「そんなことない!おれ浮かせるの得意だもん!」
言うそばからカゴの中のバスタオルをふわふわ浮かせて物干しにひっかける。
だが、何枚もある上に重量もほとんどないそれを同時にコントロールするのは難しかったようで、制御を失った布きれは風に流されてしまう。
「わ!ごめん!」
とっさに放たれた真木の触手が空を泳ぐタオルを捕まえ事なきを得るが、ご近所さんにどう思われただろうか。葉はごめんなさい、と唇を尖らせるとまた布団の上に寝転んだ。
「まぎさんも一緒に寝ようよー」
「おまえは寝てばっかりだな……」
「寝る子は育つってきょーすけ言ってたよ」
葉は、くぁあと大きな口を開ける。
「おれ、はやく大きくなってきょーすけの役にたちたいもん」
「俺だって」
と言いかけて真木は口を噤んだ。
あの人の役に立ちたい、と心から願うがいくらたってもまだ仕事には連れて行ってもらえない。
そこらの大人のエスパーにだってひけを取らないくらい、強くなったというのに。足手まといにはならないはずなのに。
少佐は今どこにいるのだろうか、とあの雲が流れる空をぼんやりと見る。
もっと強くなって、もっと自由になって、飛んで行きたい。
そんなふうに物思いに耽っていると、自分まで眠くなってきた。
真木はカゴを放りだして日干ししている布団の上、葉の隣に横になる。
しばらくすると、
「あたしもー!勉強あきたー!」
と隣の子供部屋からテレポートしてきた少女がくわわった。
夜遅く、兵部が少しだけ学生服を乱してこっそり鉄と硝煙の匂いを纏わせて帰ってきた時も、3人の子供達はまだ眠っていた。干しっぱなしの洗濯物、作りかけの夕食、出しっぱなしの掃除機、散らばった教科書とノート。兵部は苦笑すると、それらを空中を撫でる見えない力で片付けた。
「ただいま。……って聞こえてないか」
3人の子供はよく眠っていた。
拾って保護しているとはいえ、兵部も忙しくてめったにこの家に帰って来られない。たまに会える時に起こさないでいたらあとから怒られるだろうが、あどけない寝顔をずっと見ていたい気もした。
まだ幼い頃蕾見家に引き取られた兵部は、血の繋がった肉親と思えるような人間はいなかった。
いたとしても、70年近くたっているのだ、友人もかつての仲間も、とっくに死んでいる。血の繋がらないけれど同じくまだ生きている大切な姉とは袂をわかって今や命の奪い合いをするような間柄だし、もちろん兵部自身に子供や孫はいない。
こん穏やかな気持ちを知るなんてあのころは予想が出来なかった。
兵部は3人の子供の上に順にタオルケットをかけて頬にキスすると、自分もまた大きなあくびをして隣で微睡むのだった。
――――
だらっといきます。
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